ウクライナ危機で問われるNATOの意味
アフガニスタン後の存在意義を見失いかけていたNATOをロシアが救う?
団結を保てるか ウクライナ危機はアフガニスタンやコソボより大きな試練になる David Mdzinarishvili-Reuter
13年に及ぶアフガニスタンでの任務が終わりに近づき、NATOは新たな役割を模索していた。戦争の長期化と多大なコストは厭戦ムードを生み、域外地域における危機管理という冷戦後のNATOの役割に疑問を投げ掛けた。NATOの存在意義が問われていた。
そんなNATOを救ったのはロシアだ。ロシアがウクライナ南部クリミア半島に侵攻したおかげで、NATOは原点に返れた。「NATOの最大の責務は加盟国の領土と国民の防衛」だと、先週の記者会見でアナス・フォー・ラスムセンNATO事務総長は語った。
NATOはこの日の外相理事会でポーランド、ルーマニア、バルト3国など東欧の加盟国の防衛強化を決定。ロシアとの軍事および民間協力を全面停止し、「ウクライナ軍の治安能力向上」に向けた支援強化も決めた。
しかし具体的な方法については意見が分かれたままだ。アメリカはポーランドとバルト3国に戦闘機を配備しているが、ロシアと国境を接するこれらの国々はより強い措置を望んでいる。一方、ドイツ、オランダ、イタリアなどは外交による
緊張緩和を模索中だ。
ポーランドは領内に1万人規模のNATO軍を駐留させるよう求めている。ポーランドは99年、ハンガリー、チェコと共にNATOに加盟。04年には旧ソ連圏の他の7カ国がNATOに加盟した。こうしたNATOの東方拡大にいら立つロシアをなだめるため、NATOは新規加盟国への戦力配備を自制することに合意した。
しかし今回、ロシアがクリミアを占領し、ウクライナとの国境付近に約4万人の兵力を集結させたことで、合意はほごになったと一部の加盟国は考えている。「ポーランドは条約の文言だけでなくNATO軍によって守られるべきだ」と、ポーランドのトゥスク首相は語った。