繁栄するタイ水産業に隠された漁業奴隷
乱獲と奴隷労働の悪循環
こうしたタイの漁場は、世界のシーフードのかなりの部分を供給している。タイは中国とノルウェーに次ぐ世界第3の水産物輸出国であり、国連食糧農業機関(FAO)の評価によれば11年の輸出額は約73億ドル。アメリカのタイからの水産物輸入量は昨年で16億ドル以上。アメリカで消費される貝類とエビの大半は、タイなどアジア諸国で捕れたものだ。
タイの水産業が外国から稼ぐ金の大部分は、国内の腐敗したひと握りの有力者の懐に入る。昨年にはカンタン地方で奴隷扱いされていた労働者たちが救出される事件が起き、業界全体に広がる搾取の構造が明らかになった。カンタン事件の捜査に関わったタイ警察の幹部がEJFに語ったところでは、多くの影響力のある人々から、地元の実業家を対象とする捜査の中止を要請する脅しが入ったという。
EJFの報告はまた、タイの水産業に規制がなく、管理の水準が低いことを問題視している。タイ政府は漁船や労働者の雇用に関する基準を決め、遵守させようとしているが、いつも失敗に終わってきた。
「資源が乱獲され、漁獲量が減ってきたため、事業主は立場の弱い労働者に儲けが出るまで海で漁を続けさせる。そのくせ人件費はますます削減しようとする」と、トレントは言う。「タイ政府と世界の水産業界は、この状態を無視し続けるわけにはいかない」
直ちに虐待をやめさせることができないのなら、レストランでタイのエビをボイコットするのが一番効果的だろう。
[2014年3月18日号掲載]