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ウクライナ危機を理解する3つの質問

2014年2月20日(木)17時13分
ダン・ペレシュク

 一方、ウクライナ西部では多くの市民が、ロシアの言いなりになってウクライナのEU加盟計画をぶち壊した腐敗まみれのヤヌコビッチ政権を倒すべきだと考えている。

 両者の対立は先鋭化する一方だが、なかでも懸念されるのが、ウクライナ西部の複数の地域で反政府系の独自組織が結成されていること。「人民評議会」を名乗るこの組織は独立広場に集うデモ隊の信任を得ており、政治機能などの権限を主張している。19日には西部最大の都市リビブの「人民評議会」が、中央政府から独立して行動すると宣言した模様だ。

■問題解決に向けて欧米諸国は何をすべき?

 明快な答えはない。EUは20日には緊急の外相会議を開き、政権幹部などへの「標的を絞った制裁」を検討するという。だがウクライナがこんな状態に陥ったのはそもそも、ウクライナの危機を軽視し、両陣営の暴力行為を口先で非難するだけだったEUとアメリカの戦略ミスの表れともいえる。

 ロシア側がヤヌコビッチ政権に対し、巨額の資金援助や天然ガスの値下げといった「ニンジン」をふんだんに提供して取り込みを図ったのとは対照的だ。

 昨年秋にウクライナのEU加盟への扉が閉ざされて以降、欧米諸国はヤヌコビッチ政権に有意義な働きかけをしてこなかった。反政府デモ隊は、数ヶ月前までウクライナのEU加盟路線を歓迎してくれていたはずの欧米諸国に見捨てられたように感じている。

 残されたカードは、ウクライナの政権幹部や、政府と癒着したオルガルヒ(新興財閥)に対する経済制裁しかない。彼らは資産の多くを欧州の銀行に預けているのだから。

From GlobalPost.com特約

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