アサド化学兵器は見つけても廃棄不能?
国際管理下で廃棄計画が進んでいるが、処理を行う場所探しが最大の難関に
前途多難 現地では国連とOPCWの活動が待ったなしで進んでいるが Khaled al-Hariri-Reuters
9月に米ロが合意した枠組みに基づき、国際管理下におけるシリアの化学兵器の廃棄計画が進んでいる。
化学兵器禁止機関(OPCW)がシリアに派遣している査察官によると、国内の化学兵器製造設備の破壊は完了。アサド政権は来年1月までに、保有する1300トン以上の化学兵器を国外へ移し、6月末までに廃棄を完了させる予定だ。
ただし、具体的な処理方法は不透明なままだ。最大の問題は、処理をする場所をめぐって迷走が続いていること。NRKノルウェー公共放送局が入手した国連のメモによると、ベルギーとノルウェーのほか、5つの国連安保理常任理事国(アメリカ、ロシア、中国、フランス、イギリス)が候補に挙げられている。
このうち、ノルウェーは既に受け入れ拒否を表明。処理設備がないことや法律の不備を理由にしている。
そこで注目されたのが、07年に世界で初めて自国の化学兵器の廃棄を完了させたアルバニアだった。同国のディトミル・ブシャティ外相は10月に仏ル・モンド紙に対し、米高官から「打診」があったことを認めていた。
技術的な能力があるのか
アルバニアの化学兵器は02年12月に、放棄されていた貯蔵庫で偶然、発見された。70年代半ばに中国から輸入されたと考えられているが、記録は見つかっていない。
アルバニア政府はアメリカから資金と技術の支援を受け、18トン以上の化学兵器を処理。費用は約4500万ドルに上った。しかし、焼却後の有害廃棄物は25個の容器に入れられ、首都ティラナから20キロ近く離れた村で屋外のコンクリートの上に置かれている。EUの協力で有害廃棄物の貯蔵施設を建設する計画もあるがいまだに完成していない。
環境保護団体は、アルバニアは化学兵器どころか通常兵器の処理も覚束ないと批判。有害廃棄物の管理がおろそかで、今も自然界に脅威を垂れ流していると指摘する。