独裁者たちのSNS活用法
アラブ諸国の当局者は現在、ネット上の発言を理由とした逮捕・罰金・投獄に法的裏付けを与えるため、緊急事態法やテロリズム対策法、出版法といった既存の法律の手直しを進めている。「インターネットとSNSが広がり始めた頃は、出版法の規制対象は主流のメディアだけだったが、今は違う」と、ニューヨークの人権擁護団体フリーダム・ハウスのコートニー・ラドシュは言う。
当局と人々の戦いは続く
例えばUAE当局は3月、民主活動家のサレハ・アル・ドゥファリを逮捕した。ドバイのシリア領事館前で許可なくデモを行ったシリア人亡命者を国外退去処分にした政府の決定をツイッターで批判したためだ。
「ドゥファリは争いを誘発し、国の統一と社会の平和を妨げる思想を広めた容疑で逮捕された」と、ドバイの警察当局は声明で述べた。
この逮捕は人々をおじけづかせようとする政府の作戦だが、同時に政府も人々の異議申し立てを恐れていると、ジャーナリスト保護委員会のアブデル・ダイエムは指摘する。「いま起きている出来事は政治的に極めて重要であり、極めて広範囲に影響を与える。だからチュニジアやシリアの出来事が湾岸諸国で大きな意味を持つ」
「もちろん(アラブ諸国は)それぞれ別の国家だが、SNSはアラブ世界全体で利用されている」と、アブデル・ダイエムは話を続ける。「だからジャーナリストやブロガーや一般市民は、新しい表現手段の可能性を追求し、政府が批判をどこまで許すか試している」
一方、政府も人々の反応を試していると、ツイッターのフォロワーが10万人以上いるUAEの人気政治評論家スルタン・アル・カセミは言う。「湾岸諸国ではSNSがコミュニケーションと批判の手段として定着し始めたばかりだ。SNSが広まれば、表明される意見は当然増える。必ずしも当局の意にそぐわない意見も出てくるだろう」
法律を冒して意見を表明するジャーナリストやブロガー、一般市民は、弁護士不足の問題とも戦わなくてはならない。「アラブ諸国の弁護士にとって、SNSは未体験ゾーン。多くの国では、この分野の訓練と経験が不足している」と、フリーダム・ハウスのラドシュは言う。
「テレビが登場した当初も、番組関係者が取り締まりの対象になるケースは今より少なかった。テレビがまだ新しいメディアで、当局の対応が追い付かなかったからだ。いずれにせよ政府と市民の戦いは今後も続いていく」
それでも今度の戦いでは、インターネットとSNSの特性が負の連鎖を断ち切る役割を果たす可能性がある。「SNSはユーザーや関係者の数が従来のメディアよりずっと多い」と、ラドシュは話を続ける。
「既存のメディアは少数の人々の所有物で、わずかな人々に仕事を与えているだけだった。しかしSNSでは、社会の広範な人々がそれを使うことで利益を得ている。だから(テレビより)ずっと多くの人々が、SNSの自由を守るために立ち上がるかもしれない」
From GlobalPost.com
[2012年4月 4日号掲載]