最新記事

北朝鮮

金正恩体制で露呈した極限の人肉食

強制労働収容所での人権侵害に続いて明らかになった壮絶な飢餓の実態

2012年5月24日(木)15時23分

体制は変わらず 金正恩第1書記(中央)はよく肥えているが Bobby Yip-Reuters

 食べるものがなく極限まで追いつめられた人間はどうするか――厳しい食糧難が続く北朝鮮で、壮絶な実態が新たに明らかになった。

 韓国の政府系研究機関、統一研究院が新たに作成した人権白書では、公開処刑を目撃したという脱北者230人の証言を集計。これによると、2006年以降に公開処刑された者の中には、人肉を食べたり売ったりした者が少なくとも3人は含まれていたという。

 ある男は同僚を殺害して体の一部を食べ、残りを羊の肉と偽って市場で販売しようとしたらしい。中国との国境に位置する恵山市では3年前、食糧不足に困窮した者が少女を殺して食べる事件が発生。3件目の事件は昨年発生したようだが、詳細は分からない。

 このニュースを報道した韓国の聯合ニュースは、北朝鮮の情報統制が厳しいため、いずれの事件も裏づけを取ることはできなかったとしている。

繰り返す失政と飢饉

 北朝鮮ではデノミを断行した09年以降、食糧難が一層悪化したとみられる。

 だが01年に脱北したある公務員の証言によれば、99年以降にも10件以上の人肉食事件が発覚したらしい。

 200万人近くが死亡する大飢饉が発生した90年代半ばにも、人肉食事件が複数発生したと言われている。

 常軌を逸した人権侵害疑惑は他にもある。4月には、ワシントンの人権団体「米北朝鮮人権委員会」が北朝鮮の強制労働収容所で行われている過酷な人権侵害を告発したばかりだ。

 同団体は衛星画像や収容所の脱走者、元看守の証言を収集して分析。その結果、約20万人の政治犯が収容所に入れられており、1人の政治犯のために家族全員が収容されているケースもあると指摘している。

 当の北朝鮮政府は、強制労働収容所の存在そのものを否定している。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ難民キャンプ、イスラエルの空爆で8人死亡=医療

ワールド

ロシア西部クルスク州にウクライナのミサイル、6人死

ワールド

米、中国半導体設計会社をブラックリストに ファーウ

ビジネス

ユーロ圏消費者信頼感指数、12月はマイナス14.5
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:アサド政権崩壊
特集:アサド政権崩壊
2024年12月24日号(12/17発売)

アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
  • 5
    【クイズ】世界で1番「汚い観光地」はどこ?
  • 6
    国民を本当に救えるのは「補助金」でも「減税」でも…
  • 7
    クッキーモンスター、アウディで高速道路を疾走...ス…
  • 8
    「え、なぜ?」南米から謎の大量注文...トレハロース…
  • 9
    大量の子ガメが車に轢かれ、人間も不眠症や鬱病に...…
  • 10
    「中国を止めろ!」沖縄上空で米軍<核>爆撃機と航…
  • 1
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 2
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いするかで「健康改善できる可能性」の研究
  • 3
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達した...ここまで来るのに40年以上の歳月を要した
  • 4
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 5
    ウクライナ「ATACMS」攻撃を受けたロシア国内の航空…
  • 6
    電池交換も充電も不要に? ダイヤモンドが拓く「数千…
  • 7
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 8
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 9
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 10
    【クイズ】アメリカにとって最大の貿易相手はどこの…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 7
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 8
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 9
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中