民主化ビルマのビジネスチャンス
経済規模はいずれ10倍に
東芝など日本の大手メーカーの役員は先月、枝野幸男経済産業相のビルマ訪問に同行したが、ハイテク産業にとって魅力的な材料は少なかったに違いない。
それなのに、今やビルマが各国企業の注目の的になっているのはなぜか。チャンスが転がる分野があるからだ。
「(米国務長官のヒラリー・)クリントンと(英外相のウィリアム・)ヘイグの訪問以来、関心が広がっている」と言うのは、東南アジアを主要な投資対象とするプライベートエクイティ・ファンド(未公開株投資ファンド)運用会社、レオパード・キャピタルのダグラス・クレイトンCEOだ。「投資家の視界に入り始めた」
大半の企業はビルマの法改正の結果待ちで、今のところ「投資段階」でなく「調査段階」にとどまっている。それでも改革次第で、1〜2年後には投資段階に突入するだろうと、クレイトンは言う。
保守的傾向が強い多くの企業は、先に挙げた事情のせいで今後もビルマを敬遠するはずだ。だが未開拓の地域に、リスクでなく商機を見いだす企業もある。そうした一部の企業にとって、ビルマは期待の星だ。
「ビルマほどの大きさで、多国籍企業がほとんど進出していない国はあまりない」と、クレイトンは指摘する。「あれほどの国土があれば、経済規模が今の10倍になる潜在力がある。しかもビルマは投資業界の2大大国、中国とインドの中間に位置している。途上国の中でも特殊な地理的条件だ」
現段階で、外国企業が最も関心を寄せているのは資源採取と発電部門だ。全米アジア研究所のジャレッド・ビシンジャー研究員が指摘するように、昨年3月までの1年間にビルマが取り付けた外国投資200億ドルの行き先は、ほぼすべてがこの2つの分野だった。
法改正の先行きが不透明ななか、豊かな天然資源を誇るビルマでは今後もこの2つの分野が外国企業を呼び込む材料になるだろう。「こうした分野なら、ビルマの労働力や金融とあまり関わらなくて済む」と、マッコーリー大学のターネルは言う。
とはいえターネルがみるところ、特に新法案が可決された場合は、ほかの分野への関心も将来的に増すはずだ。ビルマの観光業は大きな可能性を秘めているし、絶望的に不足するインフラは今後数十年間に、外国企業の手で整備される可能性が高い。未熟な金融部門には外国からの投資が不可欠で、不動産部門にも外国企業がどんどん参入してくるに違いない。
関心の高まりを受け、国際的不動産サービス企業のコリアーズ・インターナショナルは昨年10月、ビルマの中心都市ラングーン(ヤンゴン)の不動産市場報告書を初めて発表した。