最新記事

安全保障

三菱重工サイバー攻撃、中国の反論

ミサイルや潜水艦、原発関連のデータを狙われたようだが、中国は自らもサイバー攻撃の被害者だと主張

2011年9月21日(水)16時39分

標的は日本の軍事技術? 三菱重工だけでなくIHI、川崎重工業も攻撃を受けていた Toru Hanai-Reuters

 9月19日、日本の防衛産業最大手の三菱重工業は社内のコンピューターシステムがハッキングの被害を受け、一部の情報が流出したことを認めた。

 同社の対応に日本政府は苦言を呈した。日本国内で多くの防衛関連企業がハッカーの標的にされる恐れがある中、政府への報告が遅れたからだ。防衛省によると、同省と防衛装備品メーカーの契約では情報漏えいやその疑いがあった場合は即座に報告することが義務付けられている。三菱重工は米防衛産業大手のライセンスを受けて、F15戦闘機や、パトリオットなどミサイルシステムの生産を行っている。

 三菱重工業が潜水艦やミサイルなどの生産拠点のサーバーやパソコンがサイバー攻撃を受けたことに気付いたのは8月中旬のこと。しかし防衛省がその事実を知ったのは19日の報道を通じてだった。

 ウイルスに感染したサーバーやパソコンは合計83台。コンピューターシステムが外部から不正アクセスされ、情報の一部が漏えいした可能性があると同社は認めている。英BBCによれば、今回の攻撃はミサイルや潜水艦、原子力発電施設に関するデータを狙ったものだ。ただし日本政府は、機密事項の流出はなかったとしている。

証拠がない中国犯人説

 中国外交部は20日、中国がサイバー攻撃を仕掛けているのではないかという見方をはねつけた。北京で開かれた記者会見では外交部の洪磊(ホン・レイ)報道官が「中国政府は一貫してハッキング活動に反対してきた。関連する法律が厳しくこれを禁じている」と語った。「中国はサイバー攻撃の主な被害国の1つだ。中国をサイバー攻撃の拠点だとする非難には根拠がないうえに、インターネットセキュリティーについて国際協力を進めるうえでも有益でない」

 20日には、IHIと川崎重工業、三菱電機も同様の攻撃を受けていたことが判明した。IHIは防衛省向けに戦闘機のエンジン部品を、川崎重工は航空機やヘリコプター、ロケットシステムなどを生産している。これらの企業ではウイルスが添付された電子メールが送りつけられたことが確認されているが、ウイルスに感染したケースや情報流出はないという。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米CB消費者信頼感3月は92.9に低下、期待指数は

ワールド

米、ロ・ウクライナと合意 黒海での航行安全確保巡り

ワールド

中国、軍事・サイバー上の最大の脅威=米情報機関

ワールド

韓国南東部で山火事拡大、世界遺産の安東河回村にも避
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 4
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 5
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 6
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 7
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 8
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 9
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 10
    トランプの脅しに屈した「香港大富豪」に中国が激怒.…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 6
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中