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韓国五輪をもぎ取った李明博の集票マシン
数百人の側近やビジネスマンからなる代表団を率いてIOC総会に乗り込み、物心両面で世界を口説き落とした手腕
歓喜 李大統領を中心に3度目の正直で招致に成功 Rogan Ward-Reuters
6日の深夜にニュースを見ていた人たちは、シャンパンのボトルを開けたかのように歓喜を爆発させた。
「泣かずにはいられなかった」と、平昌(ピョンチャン)の高級ホテルのロビーにいたコ・スンヒは言った。「長い間、待ちに待ったのだから」
ソウルから車で3時間ほどの丘陵地帯にあり、冬のリゾート地として知られる平昌はミュンヘン(ドイツ)とアヌシー(フランス)を大差で破り、2018年冬季五輪の開催都市に選ばれた。
平昌に暮らす4万6000人ほどの人々は国家のプライドよりも、五輪に向けて着実な伸びが見込まれる観光業への期待に胸を躍らせている。「いい機会になるだろう」と、夫と小さなホテルを経営するチャン・ジュリは言う。「うちのホテルの1階にレストランをオープンするつもり。スキーやスノーボードのレンタルもしたい。もしかしたらカラオケも始めるかもね」
韓国の政治家やビジネスマンも、60年前の朝鮮戦争で激戦地となったこの地域に数十億ドル規模の投資を行いたいと考えている。莫大な費用のかかる計画の一つが、高速鉄道の建設だ。山を削って長いトンネルを造り、ソウルから平昌を通って東海岸沿いの江陵まで1時間ほどで到着できるようにする。
韓国は2010年大会でバンクーバー(カナダ)、2014年大会でソチ(ロシア)に敗れており、今回は3度目の挑戦。李明博(イ・ミョンバク)大統領は、招致合戦の全面改造を命じていた。それは国際オリンピック委員会(IOC)に対する「全面攻撃」をみればよくわかる。
李は決意も新たに、数百人の側近やビジネスマンからなる代表団を率いてIOC総会が開催された南アフリカのダーバンに乗り込んだ。そして代表団それぞれに特定の相手との交渉に当たらせ、冬季五輪を「新たな地平」(韓国が今回打ち出した理念)に引き上げる必要性を説いて回らせた。
サムスンびいきは「両刃の剣」
李は公には笑顔を見せていたものの、裏ではIOCの投票直前まで側近たちを厳しく指揮していた。韓国の聯合ニュースによれば、「最後まで間違いがあってはならない」と、李は側近に語っていた。「誠意が一番大事だ。全力を尽くそう」
確実に得られる票は、米フォーブス誌が選ぶ「韓国の富豪40人」のトップで、財閥サムスングループの会長である李健煕(イ・ゴンヒ)のものだった。IOC委員である李会長は、大統領の支持者と見られている。彼の影響力のおかげで、韓国最大の複合企業サムソンと取引がある国々の代表から広い支持を取り付けられたようだ。
結局、李大統領が組織した集票マシンは圧倒的な勝利をもたらした。平昌は106票中65票を獲得し、最後まで対抗馬と見られていたミュンヘンは25票、アヌシーはたったの7票だった。
李大統領と李会長の関係はリスクも伴う。韓国のあらゆる業界や産業を支配するサムスンを、大統領がひいきにしていることに多くの韓国人が不満をもっている。中小企業の重要性を口では言いつつ、大統領はここ数年、世襲支配を続けるグループ企業間の株式持合いに対する規制を緩和し、複合企業の拡大を奨励してきた。
20代の失業率が20%と報じられ、物価高で国民の生活苦が指摘される中、低下している李大統領の支持率はこれで一時的に上昇するかもしれない。だが五輪開催を勝ち取ったことが、有権者の李への「賛同」になる保証はない。