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朝鮮半島

北朝鮮「権力闘争」が招いた砲撃事件

2010年11月24日(水)17時34分
横田孝(本誌編集長・本誌国際版東京特派員)、ジェリー・グオ、メリンダ・リウ(北京支局長)、クリストファー・ディッキー

「第2の冷戦」に中国が巻きこまれる

 北朝鮮内部の権力闘争は、すでに臨戦モードの朝鮮半島にとって深刻な潜在的脅威になる。長年続いた「太陽政策」を転換した保守派の李明博(イ・ミョンバク)大統領が率いる韓国政府は態度を硬化させている。報道によれば、彼は砲撃の直後にテレビ電話会議で将軍たちを召集し、武力報復を検討したという(今のところ報復は自制されたものにとどまっている)。

 中国政府は弟分の北朝鮮に対する苛立ちを募らせているのだろうか。事件当日の中国外務省報道官の「(南北双方が)平和に貢献するためにさらに行動すべきだ」という生ぬるい発言を聞くかぎり、中国政府はもはや核をもつ隣国を押さえつけることを諦めたのかもしれない。

 対北朝鮮政策が効果を上げていないことについて、中国国内にまだ目立った意見対立はない。だが大胆になった北朝鮮が北アジアで第2の冷戦を引き起こすのは、中国にとって最悪のシナリオだ。そうなれば中国は否応なくアメリカと対峙することになる。それも実力未知数の習近平(シー・チンピン)が胡に代わるというときに。

 こうしたありとあらゆるごたごたのなか、北朝鮮は再び「主役」の座を取り戻すことに成功した。将軍様はほくそ笑んでいるかもしれない。

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