最新記事

対談

ツイッターが変える日中の未来(1)

2010年11月2日(火)17時18分

津田:巨大な中国のインターネットを政府がどうやって検閲するのか前から疑問に思っていました。実際には民間企業に委託している、という話を聞いて結構ゆるいんだなと思ったんですが、それ以上に衝撃的なことがありました。教え子の中国人学生の1人にそういった企業に以前勤めていた人がいるのですが、検閲作業を通じて日本のさまざまな情報を知るうちに中国メディアの報道を疑問視するようになり、日本のアニメも好きになって最後は親日派になったというんです(笑)。

安替:(笑)。私は南京生まれで、かなり強烈な反日教育を受けて育ち、情報や分析能力がないころは「世の中で起きている悪いことはすべて日本が原因」と思っていました。敏感でピリピリした中国の若者が一番はけ口にしやすい相手が日本なんです。ただ「10%」の本当の情報に触れると中国人の気持ちは変わります。私自身、日本に対して悪い印象はもっていません。

津田:オバマの話は日本ではありえないですね。日本ではオールドメディアがまだ非常に強く、重要な情報は記者クラブに流れます。僕もツイッターを使って情報発信していますが、それ自体がお金になるわけでもない。市民運動もあるのですが、ある意味政治的な色が付きすぎていて多くの人を巻き込むことができない。僕がツイッター・ジャーナリズムについて教えている一方で、同じ早稲田大学で大手新聞出身の教師が「ネットなんて信用できない。ツイッターはその最たるもの」と言っている(笑)。こういう状況を変えていくことは本当に難しい。

日本でツイッターが注目されるきっかけは、去年のイラン大統領選でした。普通のメディアに流れない情報がツイッターに流れていることが分かってメディアの注目が集まったのですが、今の尖閣に始まる中国の問題も同じだと思います。ツイッターで既存メディアにはない生の声を知ることができる、ということを信頼のある人が発信していくことで多分変わっていく。ネットに偏見のない若い人たちが両国でメディアに入っていくことでも変わる。

そう思う反面、日本独自の難しさもやはりあります。そうなると、今中国人に対して一番発信力のあるのは蒼井そら、となってしまう。ほかのメディア人は何をやっているんだ、と(笑)。

安替:既存メディアが無能なときに、ツイッターはアジェンダ・セッティング(議論の枠組みの再構築)の機能を発揮できます。

津田:僕も(『Twitter社会論』で)同じことを書きました。

安替:自由なメディアがないからこそ、ツイッターは中国で革命的なパワーを発揮できました。中国メディアの記者の多くはブロガーであり、ネットユーザーでもあります。所属するメディアで書けないこと、放送できないことを躊躇なくツイッターに流す。メディアが無能なときにこそツイッターが役割を果たすという理論に従えば、日中両国のメディアの報道内容がでたらめな今こそ、ツイッターは力を発揮できる。共同通信がツイッターを通じて流す情報も重要な情報源になっています。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NEC委員長、雇用の伸び鈍化見込む 人口減と生産性

ワールド

中国BYD、米政府に関税払い戻し求め提訴 昨年4月

ワールド

EU、第三国の港も対象に 対ロ制裁20弾=提案文書

ビジネス

ECB現行政策「適切」、インフレ率は目標に収束へ=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 2
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...周囲を気にしない「迷惑行為」が撮影される
  • 3
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業績が良くても人気が伸びないエンタメ株の事情とは
  • 4
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 5
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「二度と見せるな」と大炎上...女性の「密着レギンス…
  • 8
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 9
    【銘柄】なぜ?「サイゼリヤ」の株価が上場来高値...…
  • 10
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 9
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 10
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 7
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 8
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中