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新興国ブラジル大統領選、民営化論争の行方
ヴァーレやペトロブラスなど巨大企業の競争力が繁栄の原動力、という点では誰も異論がないのだが
ブラジル大統領選の決選投票が10月31日に迫るなか、対立候補2人が国営企業の民営化をめぐる妙な争いを繰り広げている。与党・労働党のディルマ・ルセフ前官房長官も、野党・社会民主党のジョゼ・セラ前サンパウロ州知事も、民営化には反対姿勢。だがルセフはセラが石油会社ペトロブラスなどの民営化に賛成していると非難し、一方のセラは国家の財産に値する企業を手放したりしないと反論するなど、不毛な小競り合いを続けている。
しかし逆に、ルラ現大統領の大きな功績は税金を浪費してばかりの国営企業を整理したこと。結果、ブラジルの銀行は世界屈指の競争力を誇るようになり、国営企業は世界が欲しがるような効率的な組織に変わった。
97年に民営化された鉄鉱石大手ヴァーレがいい例だ。同社は世界各国で企業の吸収合併を行い、事業を拡大している。肥大化して「ペトロザウルス」と揶揄された国営石油会社ペトロブラスも、競争力を高めるため事業の一部を売却した。
ルセフもセラも今は批判しているかもしれない。だが、どちらが次期大統領に就任しても、民営化はブラジル繁栄の原動力であり続けるはずだ。
[2010年11月 3日号掲載]