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外交菅首相は日米同盟をリセットできない
締結50年の日米安保条約にはアップデートが必要だが、日米両政府とも普天間以外の問題について「修繕」準備をしているようには見えない
慎重な船出 衆議院本会議での所信表明演説に向かう菅直人新首相(6月11日) Issei Kato-Reuters
鳩山由紀夫首相が辞任し、日米関係に「リセット」のチャンスが訪れている。日米関係の冷え込みは鳩山とバラク・オバマ米大統領の個人的な不和と、延々と続いた沖縄の海兵隊普天間飛行場をめぐる議論が原因だった。だが両国は果たしてこのチャンスを生かすことができるだろうか。
新首相に就任した菅直人が06年の日米合意を守る意思を示しているので、普天間をめぐるいざこざは棚上げされているように見える。今年で締結から50年の日米安全保障条約にはアップデートが必要。だが日米両政府とも、普天間基地以外の問題について修繕準備をしているとは思えない。
これまでのところ菅の発言は正しい。「新首相は日米同盟の重要性を強調するために可能なことは全てやった」と、日米関係に詳しい米政権筋は言う。「非常に複雑な課題もあるが、これまでの菅首相の発言を聞いて安心している」
菅は就任会見で、日米同盟は日本の外交の基軸であり、06年の日米合意を守ると誓った。だが菅は所信表明演説では、中国との関係強化について重視しているとも語った。
多くの米政府関係者はこの言葉が、昨年初めて政権に就いた民主党の「リスクヘッジ」だと見ている。オバマ政権が日本に対してふさわしい尊敬と注目を払っていないと、日本政府が今も感じている表れだというのだ。
元国務副次官補東アジア担当のランドール・シュライバーは、最近の日米関係の冷え込みについて「まだ続いていると思うが、首相交代はリセットのチャンスだ」と言う。鳩山政権の問題は鳩山個人の問題だった。彼の政治スタイルや、自分で設定した期限を守れなかったことが信頼を失う結果を招いたと、シュライバーは言う。
落ち着くところは「現状維持」
では菅首相に代わった今、問題は何もなくなったのだろうか。
そうではない。中国に関する菅の発言は、安全保障や経済、外交のより幅広い問題について日米政府の意見が必ずしも一致してないことを示している。
「日米の問題は普天間だけではない。だが普天間に関する議論しかしてこなかった」と、シュライバーは言う。「誰かが議論を次の段階に進め、より幅広い地域問題について話し合いを始める必要がある。そしてそれは我々でなければならない」
菅が同盟関係の見直しをリードする可能性は低い。経済と議会における民主党の地位の維持に集中しなければならないだからだ。
「菅首相は鳩山の後を受けて非常に用心深くなっている」と、新米安全保障研究センター(CNAS)でアジア安全保障担当部長を務めるパトリック・クローニンは言う。「7月の参院選でも党を率いなければならない。結果次第で次の連立政権の枠組みや次の内閣が決まる。基地問題の行方も決まる可能性がある」
ワシントンの日本専門家の一部は、日本の民主党はいまだに米政府からあまり尊重されていないと嘆く。今週開かれたCNAS主催の会議では同盟関係の見直しが議題になったが、新しい考えがきちんと議論される機会などあるのだろうか。
CNASの会議には沖縄県民は誰も招かれず、民主党議員の演説者は長島昭久ただ1人。彼は間違いなく有力な政治家だが、米政府の「同盟管理人たち」との昔からのつながりで知られるタカ派でもある。
「今回の会議でも『現状維持』を求める意見が大勢を占めるのは明らかだ」と、ニューアメリカ財団上級フェローのスティーブン・クレモンズは語った。
Reprinted with permission from the Cable, 18/06/2010.© 2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.