韓国を世界に売り込む男
中国モデルの進化版として模範に
韓国モデルは中国モデルの進化版と言っていい。自由市場と国家統制が混在するハイブリッド経済である中国経済に比べて、韓国経済は自由度が大きい。李は韓国を、中国の大規模な統制経済や日本の成長なき経済とは異なる、活気に満ちた存在としてアジア経済の中に位置付けようとしている。
東南アジア諸国は奇跡的な経済成長を1世代で成し遂げた国として韓国に敬意を抱いている。韓国は約4800万人の国民を貧困から脱却させて先進国の仲間入りを果たした。07年には1人当たりの国民総所得が2万ドルを上回った。
さらに韓国は中国と異なり、言論の自由と選挙に基づく多党制の民主主義を成熟させつつあり、経済成長と同時に政治的な「成長」も達成した。キャスリーン・スティーブンズ駐韓国米大使は、韓国は「第二次大戦後に数々の大きな困難を乗り越えて成功を果たした見事な例だ」と語っている。
中国モデルの欠点に懸念を抱く多くの東南アジア諸国は、中国に代わる存在として韓国に注目している。ベトナムやカンボジア、インドネシアだけでなく、ウズベキスタンの当局者も定期的に韓国を訪問。経済運営や企業経営の研修プログラムに参加している。
「途上国は自国と共通点の多い韓国の経済モデルを学ぶことに熱心だ」と指摘するのは、元高麗大学総長の経済学者で大統領直属の国家ブランド委員会の委員長を務める魚允大(オ・ユンデ)。「途上国にとって、韓国のより開放的な経済システムは中国のシステムよりも魅力的だ」
米スタンフォード大学の韓国専門家デービッド・ストラウブのみるところ、中国とロシア、日本という大国に囲まれている韓国は「繁栄と安全保障を確固たるものにするために」世界での自国の役割を明確にする必要がある。
そこで李は就任1年目、アメリカなど主要国の指導者と積極的に意見交換をした。09年には欧州諸国を歴訪。今年はアフリカに焦点を当てるとストラウブはみている。
李は韓国のイメージアップにも取り組んでいる。若者の国外ボランティア3000人をアジアとアフリカの国々に派遣し、公衆衛生の改善や児童教育に当たらせている。13年までには派遣人員を2万人に増やす予定だ。
かつては国際援助を受ける側だった韓国だが、09年には数十に上る途上国に合計10億ドルの援助を実施。5年以内にその金額を3倍に増やす計画だ。国連平和維持活動に従事している人数も、09年の400人から10年には1000人へと増員する予定。レバノンやパキスタンを含む約10カ国で韓国人の平和維持活動が見られそうだ。