中国との戦いに勝ち目はない
中国は欧米と根本的に異なる国で、欧米のように行動することも思考することもない。この事実と向き合うのはいかに困難か。その証拠に、欧米は中国政府の強さと耐久性を見誤ってばかりいる。
文明を国家単位とする国
中国の共産党政権はその崩壊を唱える予測を何度も覆し、今もあらゆる面で国民の生活を支配する。国内大手企業の大半を所有し続け、グローバル化するアメリカのメディアがもたらす影響に対処する上でも、驚くべき老練ぶりで効果的な対策を見いだしている。
中国政府が管理を徹底するのは体制崩壊をもくろむ者たちがいるという強迫観念のせいだと、欧米の専門家やジャーナリストは言いがちだ。だがこの国の政府が中国社会で大きな役割を担っている現実には、より深い理由がある。
欧米の場合と対照的に、中国の国民にとって政府は権力の縮小を求めるべき異質の存在ではなく、社会の守護者を体現する存在。いわば一家の長だ。だからこそ中国では、政府は大きな正統性を持つと見なされる。
なぜそうなのか。理由は中国の歴史にある。この国は本質的に国民国家ではなく、文明を国家の単位とする「文明国家」だ。しかも少なくとも2000年前からそうした国であり続けている。中国文明の統一の維持こそ、最重要の政治的課題かつ政府の神聖な務めとされ、結果として中国政府は欧米ではあり得ない役割を担う。
中国の現代化の歩みは欧米とは別種であり、中国が主導する世界も現在の世界とは別種のものになる。果たしてどんな世界になるのかは、途上国に起きた変化が片鱗を示している。昨今の途上国では「大きな政府」が復活し、貿易と資本取引の自由化で貧困解消を目指す米政府主導の経済改革政策への支持は減る一方だ。
新しい世界では、中国流の考え方──儒教的価値観や中国ならではの政府観や家族観──が大きな影響力を持つだろう。グーグルの敗北は来るべき世界の前触れだ。
中国が支配する世界の本質を見極めるのは早いほどいい。その姿を理解してこそ、より良い対処の仕方が分かるのだから。
(筆者は著書に『中国が世界を支配するとき──西洋世界の終焉と新グローバル秩序の誕生(When China Rules the World: The End of the Western World and the Birth of a New Global Order)』がある)
[2010年1月27日号掲載]