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Q&A「最貧国の温暖化対策を支援せよ」
コペンハーゲン会議で主導的役割を担うラッド豪首相が語った「目標」
オーストラリアのケビン・ラッド首相は筋金入りの環境保護派だ。首相就任後に真っ先に取り組んだのは京都議定書の批准だった。12月にはデンマークの首都コペンハーゲンで国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)が開かれる。ラッドはポスト京都議定書の枠組みを決めるこの会議でも重要な役割を果たすことになるだろう。本誌のバレット・シェリダンが話を聞いた。
----コペンハーゲン会議が一定の成果を挙げるには何が必要か。
最低限必要なのは先進国の(数値)目標を設定し、途上国からは「公約」を取り付けるなど、政治的な合意が形成されることだ。
----目標と公約の違いは?
2年前のバリ会議(COP13)で採択された行程表では、これまで大気中の温室効果ガスを増やしてきた責任がある先進国について拘束力のある(数値の)排出削減目標を定めることになった。途上国の公約とは、排出を現状レベル以下に抑えるための対策に検証可能な方法で取り組むという約束だ。
----コペンハーゲン会議ではほかにどんな成果を期待するか。
キリバス、ツバルなど海抜の低いサンゴ礁から成る国をはじめ、途上国のなかでも最も貧しい国々の温暖化対策を資金面で支援する枠組みが必要だ。加えて、森林伐採に関する政治的な合意も成立させたい。技術移転の実現に向けた文言も合意文書に盛り込む必要がある。
----途上国に代替エネルギー技術を供与するということか。
そのとおりだ。そうした(温暖化対策の)技術の多くは公共財と見なすべきで、単純に市場のルールを当てはめるべきではない。
----中国とインドはこれまで交渉の足を引っ張ってきたが、最近になって前向きな態度も見せている。これはただのポーズだろうか。
両国首脳とも、地球規模の包括的取り決めに向けて前向きに協力する用意があるのだろう。しかし、事態はまだ非常に流動的だ。
----先進国における最大の障害はアメリカ議会か?
確かに頭痛の種には違いない。だが、アメリカの議会や政治体制がネックになるのは今に始まったことではない。特に法的拘束力のある国際条約を締結するときにはそうだ。
----コペンハーゲン会議が空振りに終わったら、次の手はあるか。
各国政府がただ手をこまねいて、交渉がつぶれるのを黙認するとしたら、道義的にみて許し難い。
----発電所などから大量に排出される二酸化炭素を分離・回収し、地中に封じ込める技術で、オーストラリアは世界のリーダーを目指しているが、この技術には懐疑的な向きも多い。
炭素の回収・貯留(CCS)の分野では既に確立された技術がいくつもある。欠けているのは一定規模のプロジェクトだ。2008年のG8(主要8カ国)洞爺湖サミットでは10年までにパイロットプロジェクトを20件実施することになったが、09年段階でまだ1件も実現していない。
----地球工学(地球環境への工学的介入で温暖化を防ぐ技術)は有望だと思うか。
このアプローチに賛否両論があることは知っているが、今の段階では公式な結論は出せない。(温暖化防止では)既に開発済みの技術がほかにもいろいろあり、それらを導入すべきだ。CCSもそうだし、太陽、風力、波力、潮力、地熱発電などもそうだ。
温暖化の進行に懐疑的な勢力が、地球規模の合意形成を妨げれば、こうした技術の導入が進まず、時間だけがいたずらに過ぎていくことになる。
[2009年11月18日号掲載]