最新記事

イラン

ウラン搬出拒否でまた振り出しへ

2009年11月6日(金)17時39分
マイケル・ハーシュ(ワシントン支局)

 イランは10月1日にジュネーブで開かれた6カ国との協議で、ウラン再濃縮の国外委託に合意した。核計画における一定の譲歩を、オバマ米大統領も「建設的なスタート」と評価した。だがここへきて、イランが態度を急変させている。

 ジュネーブではイランが保有する低濃縮ウランをロシアで再濃縮し、フランスで軍事転用が難しい燃料棒に加工してイランに戻す案にまとまった。これを受けて国際原子力機関(IAEA)は21日、合意案を提示した。

 ヨーロッパの外交筋によれば、イランの「前言撤回」は10月28日に始まった。イラン交渉団トップのサイード・ジャリリ最高安全保障委員会事務局長は、EUのハビエル・ソラナ共通外交・安全保障上級代表に対し、合意案はイランが9月9日に示した文書を土台にすべきだと主張。だがこれはたった4ページ半の文書で、核問題にも直接触れていない。

 前出の外交筋によれば、イラン代表団は翌29日、IAEAに対してジュネーブでの約束を事実上撤回すると口頭で告げた。イランのアリ・アスガル・ソルタニエIAEA担当大使は、国外搬出分に相当する核燃料の供給を見返りとして受けなければ、低濃縮ウランは手放せないとの立場を示した。

 「(イランは)時計の針を戻そうとしているようだ」と、ある米政府高官はため息をつく。1歩進んでは2歩後退する現状は、イラン政府内で続く権力闘争の結果と考えられる。クリントン米国務長官ら米政府高官は、イラン側が意見調整を行う時間を与えたいと考えている。一方で、各国は追加制裁を含めた対策も検討する予定だ。

[2009年11月11日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏

ワールド

米、クリミアのロシア領認定の用意 ウクライナ和平で

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平仲介撤退の可能性明言 進
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 7
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 8
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 9
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 10
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中