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CIA女性スパイたちが受けた「露骨な性差別」、アルカイダの脅威を警告もブッシュ政権は...

SECRET HISTORY OF FEMALE SPIES

2024年08月22日(木)16時12分
バレリー・プレイム(元CIA工作員)
CIAのオフィス

男社会のCIAで筆者のプレイムら女性工作員たちは性差別に苦しんできた LARRY DOWNINGーSYGMA/GETTY IMAGES

<工作員の身分を暴露され全てを失った元女性スパイが、CIA女性スパイの歴史を描く本を読んで思い出したこと>

私がCIAの工作員であることをホワイトハウス高官らが暴露したのは、2003年のことだ。

原因は当時の私の夫で在イラク米大使館などで勤務した外交官のジョー・ウィルソンが、ニューヨーク・タイムズ紙に寄稿した論説だった。ジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)が同年3月にイラクへの攻撃を決定するに当たり、イラクの脅威を誇張していたと主張するものだ。


その後約20年、私はそのときのトラウマと闘い続けた。心の傷は諜報活動のキャリアを終わらせ、家族を不安に陥れ、私の情報提供者を危険にさらした。当時、私は「嘘つき」「裏切り者」と呼ばれ続け、ある共和党下院議員には「買いかぶられた女秘書」などと言われた。

CIAの工作員だったバレリー・プレイム

CIAの工作員だったバレリー・プレイム DANIEL ZUCHNIK/GETTY IMAGES

だが、ジャーナリストのライザ・マンディが昨年秋に出版した『シスターフッド──CIAの女性たちの知られざる歴史(The Sisterhood: The Secret History of Women at the CIA)』を読んだとき、今まで向き合わずにやり過ごしてきた嫌な記憶がよみがえった。

長いこと男性社会で働いてきたため、私は自分や同僚女性たちが味わった苦しみを抑え付けてきたことに気付いたのだ。

私がまだ幼かった1972年、米政府は「タイトルナイン」を制定し、連邦政府から資金を得ている学校での性差別を禁止した。その後、私が通ったフィラデルフィア郊外の高校では、男子と同じく女子向けにも多くのスポーツチームがあった。

両親は、私が追求したいことを性別によって決めるべきだとは言わなかった。大学生になっても、私は社会にはびこる性差別を知らずに過ごしていた。

そして私はCIAに入った。そこで知ったのは、世界は全く違う原則によって動いているということだ。

冷戦のただ中に私が入ったCIAは、まさに男の世界。女性を秘書などのサポート役ではなく、諜報活動に採用し始めたばかりだった。

私は作戦担当官になるための厳しい訓練を受けながら、CIAの先輩女性たちにも注目した。最もトップの層には女性が一人もおらず、上級職の女性は未婚で子供がなく、タフな人が多かった。自分がこの組織で成功できたなら、それは彼女たちが道を切り開いたおかげだと思った。

組織変革の恩恵を受けられた

一方で、彼女たちのようになりたくないとも考えていた。CIAで成功しつつ、同時に家庭を持つことはできないのか?

私たち女性工作員にとっては、「セクシュアルハラスメント」や「男女差別」はもちろん、「自覚なき差別」「無意識の偏見」といった言葉は意味を成さなかった。男性幹部からの日常的な女性差別を受け入れるしか選択肢はなかった。

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