精子バンクより、規制のないSNSやアプリでの「精子提供」を選ぶ女性たち...変質者やトラブルの危険も
THE SEARCH FOR SPERM
PHONLAMAIPHOTO/ISTOCK
<「選択的シングルマザー」を目指すアメリカ人女性が、法的規制のないネットの精子提供システムに頼り始めている>
独身女性やLGBTQ+(性的少数者)のカップルが、インターネットで見つけたドナー(精子提供者)を介して妊娠を目指すケースが増えている。本誌調査報道担当記者のバレリー・バウマンも過去4年間、自分の意思で未婚のまま妊娠・出産する「選択的シングルマザー」を目指してフリーランス(個人間の私的契約)型の精子提供システムの世界に深く入り込み、その過程で何十人ものドナーやレシピエント(精子の提供を受ける人)、専門家に話を聞いた。
アメリカ人女性の結婚・出産年齢が上がるのと同時に、「フリーランス精子」の需要自体も高まっている。妊娠のために精子バンクを利用した女性は1995年時点で約17万1000人だったが、2016年には44万人を突破。ある推定では、選択的シングルマザーになったアメリカ人女性は約270万人いる。
規制の枠外にあるフリーランス精子提供システムの実態を、以下に紹介するバウマンの新著『想定外のこと(Inconceivable)』の抜粋は垣間見せてくれる。
彼女たちは車や公衆トイレ、モーテルの部屋で人工授精を行う。尿まみれの妊娠検査スティックに祈り、サプリメントをがぶ飲みし、時にはインターネットやフェイスブック、出会い系アプリで知り合ったばかりの男性と避妊なしのセックスをすることもある。全ては、赤ちゃんが欲しいという夢をかなえるためだ。
妊娠と出産は人生最大の決断の1つなのに、正式な医療に背を向けるのはなぜか。法外に高い費用や差別、保険適用が受けられないことなど、理由はさまざまだ。子づくりの手助けをしてくれる相手がどんな人かを直接知っておきたい女性もいる(精子バンクのドナーは原則匿名)。
私もその1人だ。多くの女性と同様、最初は精子バンクのウェブサイトでドナーのプロフィールを分析し、彼らの精子で生まれた赤ちゃんの写真を凝視した。表計算ソフトで候補者リストを作成してみたりもした。
けれど多くの女性と同様、すぐに気付いた。精子バンクは私が求めていた答えではない。私は子づくりの手助けをしてくれる相手のことを知りたかったし、生まれてくるわが子に自分の出生に関する情報や洞察を与えられる母親になりたかった。
これから私が語るのは、母になる夢を実現するために家族と出産、子づくりをめぐる文化的タブーのほとんど全てに唾を吐きかけた物語だ。