男女同一賃金を勝ち取るまで──女子サッカー界のレジェンド、ミーガン・ラピノーに聞く
PROUD OF OURSELVES
ラピノーはスポーツ界だけでなく、広く社会に影響を与える存在になった SANTIAGO FELIPE/GETTY IMAGES
<「君たち女性は分かっていない」と言われ続けた日々。男女間の賃金格差と女性差別、そしてトランスジェンダー差別との闘いへの覚悟と原動力について、人気作家ロクサーヌ・ゲイが聞く>
NFL(全米プロフットボールリーグ)の人気選手コリン・キャパニックが試合前の国歌演奏時に片膝をついて、全米を騒然とさせたのは6年前の夏。それは黒人に対する警官の暴力や差別体質への抗議だった。
この「膝つき」は、アスリートが社会正義を求めるシンボリックな行為として、あっという間に全米に拡散した。むろん、彼の払った代償も大きかった。法律上は和解したが、あれ以来、彼はNFLから実質的に追放されたままだ。
同じ年、キャパニックに続いたのが女子サッカー選手のミーガン・ラピノーだ。黒人ではないが、キャパニックを含む黒人への連帯の証しとして、国歌演奏時に膝をついた。それは真のアライシップ(他者への共感と無償の支援)の表明だった。
彼女も一瞬にしてスポーツ界における「進歩」の旗手となり、キャパニック同様、非難と中傷の標的にもなった。殺すという脅迫さえ受けた。
もちろん、彼女もめげない。今年はアメリカの女子スポーツを飛躍させるきっかけとなった「タイトルナイン(教育現場における男女の機会均等を保障した教育法第9章修正条項)」の成立から50年の節目。ラピノー自身もその恩恵を受けてきたが、真の男女平等はまだ実現されていない。だから彼女は闘い続ける。
ピッチに立てば華麗なプレーで私たちをしびれさせる。チームメイトには常に的確なパスを出し、一瞬の隙を突いてゴールを決める。忘れ難いのは2019年のワールドカップ準々決勝だ。フランス戦で最初のゴールを決めた彼女は、両手を広げて満面の笑みを浮かべ、天を仰いだ。
ラピノーは今までの人生をスポーツにささげてきた。父親が監督を務めるユースチームからプロのクラブチーム、そしてオリンピックの舞台まで、彼女はどのレベルでも最高に輝いていた。
どのレベルでも歴代屈指の得点を積み上げてきた。そしてピッチの中だけでなく、ピッチの外の活動でも、数え切れないほどの賞をもらってきた。
彼女は37歳になった今も現役で、OLレインのフォワードとして活躍中だ。7月に行われる北中米カリブ海サッカー連盟女子選手権(23年の女子ワールドカップと24年のオリンピックの予選となる)に向けて、アメリカ代表チームのメンバーにも選ばれた。
でも、いつかは引退の日が来る。その日が遠くないことは彼女も承知している。だから、その先に続く道についても考えている。
本誌は人気作家のロクサーヌ・ゲイに依頼し、オンラインでラピノーと語り合ってもらった。今までのこと、現在のこと、これからのこと。そして、みんなと違うことをするときの覚悟など──。以下はその要約。
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