学生が大学を訴える──質落ちたオンライン授業に「学費返せ」
Failing Grade
学生たちは訴状で、大学側は学費返還を拒否するか、返還しても額が不十分だと主張している。「大学ごとに学生が支払った春学期の学費や寮費と、実際に受けた指導やサービスの差に相当する分の払い戻しを求めている」と、ウィリーは言う。
ウィリーとバーマンは自分たちの訴訟を集団訴訟の一部と認めるよう求めている。学生が確実に賠償を受けるためには、それが最善の方法と考えるからだ。集団訴訟では、原告1人の名前で同一または同様の訴因の利害関係者を代表して訴訟を行う。うまくいけば、名指しされた大学の学生全員が返還を受けられるはずだ。原告側は具体的な額は要求していないが、弁護団は1人1000~5000ドル弱を見込んでいる。
「一人一人の損害は少額だ。個人での訴訟は(訴訟費用と見返りを考えると)割に合わない」と、ウィリーは言う。
学費構造への影響は必至
オンライン授業が対面授業の代わりとして適切かどうか、最終的には裁判所が判断し、差があればそれを金額に換算する。手始めに、大学が従来それぞれの費用をどう設定してきたかに目を向けるのも一案だと、専門家は指摘する。
一部の大学はバーチャル授業の学費を対面授業より大幅に安く設定してきた。UNCウィルミントン校では州内出身のフルタイムの学部生の場合、2020~21年の1年間の学費は、大学での学位取得コースが4400ドル、遠隔授業の場合は約3600ドルだ。ウィリーによれば、ドレクセル大学のオンライン授業の学費も通常のコースより40%安い。大学閉鎖で受講できなかった分の学費についても同程度の払い戻しをするべきだと、原告側は主張する。
こうした訴訟は始まったばかりで、訴えられた大学のほとんどは回答を保留している。UNCシャーロット校、デューク、ドレクセル、ジョージタウンの各大学も本誌の取材にコメントを拒否。だがウィリーによれば、こうした訴えを受けて既に払い戻しに「より公平なアプローチ」を取っている大学もあるという。
例えばUNCは寮や食事サービスを利用しなかった分の払い戻しを始めたものの、今のところ学費は含まれていない。だが最新の予算案を見ると、最終的にはその可能性にも備えているようで、日割り・月割りの払い戻しなど新型コロナ関連費を埋め合わせる資金を求めている。
集団訴訟は決着まで数年かかるのが普通だ。最終的な結果がどうあれ、これらの訴訟は恐らく今後の学費構造に永続的な影響を及ぼすだろう。UNCシステムの全加盟校が夏学期のオンライン授業の値下げを発表。バーチャル授業と対面授業の学費を同じにはできないと暗に認めた。
「大学はどんな変革をするべきか熟考を迫られるだろう」と、ウィリーは言う。「対面授業の価値と質をオンラインで維持するのは無理という問題が顕在化しているからだ」
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