ロックダウン中、世界各地で早産が激減していたことがわかり反響 調査が始まっている
新生児集中治療室がいつになく空いていることに気づいた医師たちが、偶然同時期に研究を開始...... Likica83-iStock
<ロックダウン中、妊娠初期の低出生体重児の出産が一部地域で著しく減少したことがわかり、調査が始まっている......>
この春のロックダウン中、早産、とくに、妊娠初期の低出生体重児の出産が一部地域で著しく減少したことがわかった。
新生児集中治療室(NICU)がいつになく空いていることに気づいたアイルランドとデンマークの医師たちが、偶然同時期に研究を開始。結果をシェアしたところ、世界各地から同様の現象が続々と報告された。
論文は査読前の「事前公開」の段階だったが、予想外の反響を受け、早産防止の鍵究明への期待が大いに高まっている。アイルランドとデンマークのチームはタッグを組み、今後さらなる調査を行う予定だ。
デンマークでは低出生体重児が90%減少
ロックダウン中の今春、NICUにやってくる赤ちゃんがいつもより少ないことを不思議に思ったアイルランドのリムリック病院の医師たちは、2001年以降の毎年1月から4月に生まれた赤ちゃんの体重を調べ、2020年と比較してみた。同病院では過去20年の同期間、毎年約40〜50人の極低出生体重児(1500g未満)が誕生していたが、今年は6月までに4, 5人のみだった。さらに、例年は10〜15人の赤ちゃんが超低出生体重(1000g未満)だったが、今年は6月末に1人誕生しただけだった。
この結果が発表されると、偶然にもその数日前にデンマークからも類似の発表がなされていたため、これらの研究は国際的な注目を集めることとなった。
研究を率いたリムリック病院のロイ・フィリップ教授は、この調査が査読前の段階であることを強調し、事前公開することをためらったとしながらも、このような興味深い現象が大きな反響を受け、世界各国の事例からさらに調査を進められるようになったことを喜んでいるという(アイリッシュ・タイムズ)。
デンマークの研究の規模はさらに大きく全国レベルで、今年3月12日から4月14日のロックダウン期間中のデータを調べ、過去5年間の同時期のデータと比べたところ、28週以内で生まれた低出生体重児の割合が90%も下がったことがわかった。ただし、それ以降の在胎週数では著しい変化は見られなかった。
これらの研究が公表されると、アメリカ、カナダ、オーストラリア、オランダなどでも同様に減少が見られたとの報告が続々と入った。ニューヨーク・タイムズによると、テネシー州ナッシュビルのヴァンダービルト小児病院のスティーブン・パトリック博士は同病院のNICUで治療を受ける赤ちゃんが今年3月、例年より20%少なかったと述べ、これは早産が減ったことが原因だと考えているという。