誰もが容赦ない「選別」にさらされる中学生時代を見つめ直す
Don’t Blame the Kids
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<仲良しだった友達が急に疎遠になり自分の社会的位置付けが決定される中学という残酷で豊かな社会経験の見守りかた>
中学生時代(アメリカでは6年生〜8年生)は、子供の心身の成長で最も難しい時期の1つだ。「うちの子には、この時期を少しでも楽に乗り切ってほしい」という親心は十分理解できる。
作家ジュディス・ワーナーは、新著『そして彼らは私と口を聞かなくなった──中学生時代を理解する』(未邦訳)で、この時期の経験が、いかに成人してからの行動や、自分の子供に対する接し方に影響を与えるかを論じている。その一部を紹介しよう。
親にとって、子供が中学に上がることは、それ自体が一種の警告だ。中学生時代が難しい時期であることは、誰もが知っている。仲良しだった友達が急に疎遠になり、新たなグループが生まれ、誰もが容赦ない「選別」(児童心理学者マイケル・トンプソンによれば)にさらされる。
ルックスや家庭の経済状況、運動能力、さらには不可解な要因(筆者の時代は「クールかどうか」だったが、今は「社会的パワー」だとある教師は言う)に基づき、自分が人間関係のピラミッドのどこに位置するかが決定される。
親は皆、子供がこの時期をなるべく傷つかずに過ごしてほしいと願う。そこで見落とされがちなのは、子供を心配するあまり、親が道を踏み外すリスクがあることだ。
子供社会のピラミッド
筆者がそれに気付いたのは、娘(2人いるが本書では1人に合体させた)が中学生になったときだ。
多くの親と同様に、それは筆者の子育て人生で最も困難な時期だった。娘が特に反抗的だったからではない。自分自身がつらい時期として記憶している段階を、娘が通過するのを見守ることが、「1000個の切り傷による死」(ある母親の表現)のように 感じられたからだ。同級生の親たちも、子供の日常を悶々として見守っていたようだ。
ただ、筆者が驚いたのは、それまでは子供のためなら抵抗をいとわなかった親たちが(学校のカフェテリアにチョコレートミルクを置くなんて反対、キャンプの二段ベッドの割り当てに反対、学校でのスマートフォン使用制限に反対といった具合だ)、中学生時代は悲惨になるものだという考え方に、さっさと降参しているように見えたことだ。
もっと驚いたのは、時には子供よりも親のほうが、中学生のような振る舞いをしていたこと。噂話に興じ、子供の人間関係を細かく管理し、人気者になりたいという子供心を助長し、子供が傷つかないよう守ろうとする。