世界を変えた伝説のサマーキャンプ
The Joy of Finding Community
――記録映像の数々も素晴らしい。
ニューナム キャンプの初期の映像のほとんどは(70年代の実験的な映画製作グループ)ピープルズ・ビデオ・シアターが撮影したものだ。当時の監督の1人、ハワード・グーツタットを探したら、偶然サンフランシスコの私たちのすぐ近所に住んでいて。彼が71年のキャンプで撮影した5時間半の映像を持っていた。
(監督の)ジムと一緒に待ち合わせ場所のレストランに行くと、ハワードはジムを見るなり泣きだして。3人とも深い感動に包まれた。ハワードたちが早くから撮影を決意して見事にやり遂げ、その結果、50年後にジムがカメラを手にして続きを語り継ぐ道が開けたのは、本当にすごいことだった。
――逆風の中でも彼らの行動主義の背景には希望と友情と仲間意識があふれている。
ニューナム この作品の軸は自分のコミュニティーを見つける喜びだ。コミュニティーを見つけた幸福感、安心感、喜びは途方もなく大きい。私が素晴らしいと思ったのは、キャンプのいいエネルギーが自立生活センターと障害者の権利保護の取り組みに受け継がれていること。誇りと喜び、共通の目的、力を合わせて何かを始めるという感覚。政治運動や政治改革にはとても大切だと思う。
――ネットフリックスでは何カ国語もの音声解説が用意され、全編のスクリプトもダウンロードできる。
レブレクト 字幕は29カ国語、音声解説は15カ国語、視覚聴覚障害者用のスクリプトもある。音声によるスクリプトは自身も視覚聴覚障害を持つ、障害者権利擁護者のハーべン・ギルマのアイデアだ。ネットフリックスが作成したスクリプトは最終的に116ページになった。ハーベンが先日、生まれて初めてネットフリックスで映画を見た、ってツイートしていたよ。
――全米で医療従事者や食料雑貨店の従業員が安全な労働条件などを求めて抗議運動をしている。彼らがこの映画から学べることは?
ニューナム 私自身は運動の枠を超えて協力し、目標を達成するという考え方に勇気づけられた。(身体障害者法の成立を求めて戦う)障害者のコミュニティーを他のコミュニティーが支援した。(黒人の権利を勝ち取ろうとした過激派)ブラック・パンサーや女性解放運動などの支援のおかげで、障害者運動は勝利を収めることができた。
聞く力も大切だ。特に(脳性麻痺の)ナンシー・ローゼンブルームの話に全員が根気強く耳を傾けている場面はそれを痛感させる。彼女の意見の大切さを全員が理解しているのだ。お互いの真実を見て、映画の中の(著名な活動家)コーべット・オトゥールのように「あなたを理解し、信じる」と言う。それが世界を変えるのに役立つ。
レブレクト 映画の中でジューディー・ヒューマンが言うように、権利は与えられるものではなく自分から求めるもの。昔も今も生きるか死ぬかの戦いなんだ。新型コロナの危機で人工呼吸器を誰に使うか選別するというが、障害者も自分たちは「切り捨て可能」だと感じている。だがもちろん、それは変えられるんだ。
© 2020, Slate
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