最新記事

カルチャー

「女の友情」映画の新たな金字塔 女性的で母性的な女友達の深い絆

You Can Feel Its Heart Beating

2020年03月18日(水)18時15分
インクー・カン(カルチャーライター)

デスティニー(左)は職場の先輩であるラモーナと親しくなるが ©2019 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

<金融危機を背景にした女たちの犯罪劇『ハスラーズ』 。2000年代を描き出した傑作は深みのある描写が光る>

ストリッパーによる詐欺事件を描く悲喜劇が醸し出す独特のノスタルジア── 。映画『ハスラーズ』の基になったのはニューヨーク誌が報じた実話だ。2008年の金融危機を受けて、強欲な金融業界の男たちからカネを奪い返すべく2人組のストリッパーが起こした事件を題材に、監督・脚本のローリーン・スカファリアは2000年代半ばという時代を懐かしむ。

ラモーナ(ジェニファー・ロぺス)とデスティニー(コンスタンス・ウー)はドラッグ入りの酒で金持ちの客を酔わせては、彼らのクレジットカードを使い込む。その犯罪はバブルと同じく長続きしないが、最終的に2人が失ったことを何よりも嘆くのは、互いの友情だ。深い絆も、時には時代の産物でしかなく、過ぎてしまえば取り戻せない。

筆者に言わせれば、この友情こそ本作の最も素晴らしい点だ。現実には、ラモーナとデスティニーのモデルになった女性はそれほど親しくなかったというが、そんなことは関係ない。ロぺスとウーが登場するシーンは少女のような喜びに満ち、2人が結ぶ関係は、女性的で母性的な彼女たちの複雑な姿を浮き彫りにしていく。

女性同士の友情もの映画の殿堂に早くも仲間入りした『ハスラーズ』は、ほとんど完璧な作品だ。本作を見れば、あまたあるお仕着せの「ガールパワー映画」に中身がないことが分かるだろう。ここには生き生きとした魂がある。

2人の女性は、デスティニーがマンハッタンの高級ストリップクラブで働き始めてすぐに意気投合する。年上のラモーナの、ワイルドでありながら決して主導権を失わない華麗なストリップにデスティニーは魅了される(賞レースの有力候補と言われるほど圧巻の演技を見せたロぺスは、その評価に値するだけのダンスも披露している)。

hastlers02.jpg

熟練のストリッパーに扮したロペスは見事な演技とダンスを披露 ©2019 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 4

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 5

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 1

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 2

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 3

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 4

    キャサリン妃が「涙ぐむ姿」が話題に...今年初めて「…

  • 5

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 1

    「家族は見た目も、心も冷たい」と語る、ヘンリー王…

  • 2

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 3

    カミラ王妃はなぜ、いきなり泣き出したのか?...「笑…

  • 4

    キャサリン妃が「大胆な質問」に爆笑する姿が話題に.…

  • 5

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:超解説 トランプ2.0

特集:超解説 トランプ2.0

2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること