実在した...アレクサに怒鳴る男 絶対にお断りした方がいい深いワケ
I Don’t Date Men Who Yell at Alexa
多くの男性は女性に何かをしてもらうことを当然視している SLPHOTOGRAPHY/ISTOCKPHOTO; AMAZON.COM, INC. (AMAZON ECHO PLUS)
<スマートスピーカーへの口調はあなたの本質を物語る。女性の名前と声を持つ機器への態度が気になる訳>
ジェレミーが怒鳴り声で「アシスタント」に命令したとき、彼女はひるまなかった。けれど、私は動揺した。厳しくて偉そうなその口調。私に向かってではなくても、女性に対してそんな態度を取ることに嫌悪を感じた。
彼とデートし始めてから数週間、こんな言い方をされたことはない。でも、実はそういう男だとしたら? 彼の口調は傲慢で、自分が命令する立場にあることを誇示するために命令しているようだった。帰宅して部屋の明かりをつけたいなら、自分でドアの横のスイッチを押すほうが早い。なのに「アレクサ。電気をつけろ」と怒鳴るなんて。
この一件以来、私は男性が人工知能(AI)アシスタントを搭載したデジタル機器にどう話し掛けるか、観察するようになった。もちろん、誰もがジェレミーと同じではない。ある紳士は雷雨の音を流してとグーグルアシスタントに優しくお願いしたし、ある外科医はペーパータオルを注文してもらいたいとアレクサに礼儀正しく頼んだ。
子供への影響にも懸念が
スマートスピーカーは数年前に登場したばかりだが、急速に生活の一部になりつつある。アメリカで所有する人の割合は昨年末の時点で16%。同年1月から128%増加した。となれば、私は今後もスマートスピーカー利用のエチケットをめぐっていら立つことになるだろう。
アレクサを開発したアマゾン・ドットコムも同様の懸念を抱いているらしい。とはいえ心配しているのはデートの行方ではなく、子供たちのお行儀だ。同社は先日、子供用のスマートスピーカー「エコー・ドット・キッズエディション」を発表。質問する際に「プリーズ」と言うことを促す「マジックワード」機能を搭載しているという。
まさに絶好のタイミングだ。スマートスピーカーが社会性の発達に与える影響を危惧する親は多い。丁寧な言葉遣いをする必要のない「お手伝いさん」がいたら、子供の態度はどう変化するか。将来、過度に尊大な人間になるのではないか──。「スマート」な電化製品に囲まれた環境で育つ体験の長期的影響は研究されておらず、予測するのも難しい。
同じことは大人にも言える。口調を気にしないロボットに何かをしてもらう場面が増えたら、ただでさえ揺らいでいる最低限の礼儀という概念はどうなってしまうのだろう?
エチケットは後天的に習得されるもので、忘れることは簡単だ。言語学者は、AIアシスタントによって今の子供世代がより単純な言葉遣いを好むようになるのではないかと懸念するが、大人の言語表現だって影響を受けることは間違いない。
アレクサやアップルのSiri(シリ)にどんな話し方をするかは、その人物への私の見方に既に影響を与えている。バーチャルなアシスタントとの対話には、人間を相手にした場合と共通するものがあるからだ。
アレクサは人間ではないが、私たちとアレクサとの関わりは人間的だ。店員やウエーターへの態度は性格を物語るとされる。アレクサへの態度も究極的には同じ。問われているのは、上の立場になったときに下の立場にある人々にどう接するかだ。