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内部告発米検閲システム「プリズム」を暴露した男
グーグルやフェイスブックの個人情報を収集して監視する米政府の秘密が明るみに
渦中の人 アメリカ政府に追われる立場になったスノーデン Ewen MacAskill-The Guardian-Handout-Reuters
アメリカ政府が米情報機関の国家安全保障局(NSA)を使ってネット上の個人情報にアクセスしている──先週、英ガーディアン紙と米ワシントン・ポスト紙がこのスクープを報じると、大きな衝撃が走った。だが、事態はその後、さらに異例の展開をみせている。
両紙に情報をリークした人物が、自ら名乗り出たのだ。その人物とはエドワード・スノーデン(29)。コンサルティング会社の契約社員としてNSAのハワイ支部に4年間勤務したセキュリティー担当者で、CIA(米中央情報局)で働いていたこともある。
スノーデンはガーディアン紙の取材に対し、情報をリークしたのはNSAによる個人情報の極秘調査が「民主主義への脅威」だと確信しているからだと発言。リークする前にNSA内部で「職権乱用」に異議を唱えたが、無視されたという。
スノーデンによれば、NSAは「あらゆる人々の通信をターゲットにして」おり、彼自身にもすべてのアメリカ人の通信を盗み見るけ権利があったという。「私は席に座っているだけで、あらゆる人の情報を盗み見ることができた。あなたでも、あなたの会計士でも、連邦判事でも。そして、大統領であっても」
スノーデンのリーク情報に基づいて、ガーディアンとワシントン・ポストはこの数日、スクープを連発してきた。まずガーディアンが、NSAが極秘の令状によって、米通信大手ベライゾンに全顧客の通信記録を提出するよう義務付けていたと報道した。その後、この監視プログラムは7年前から行われており、同じく通信大手のAT&Tとスプリント・ネクステルの顧客も対象だったことが明らかになった。
続いて両紙は、NSAがPRISM(プリズム)という暗号名のインターネット監視システムによって、マイクロソフトやヤフー、グーグル、フェイスブックなどのサーバーからユーザーの電子メールや写真、利用記録などの情報を収集していたと報道。さらに、バラク・オバマ大統領がアメリカのサイバー攻撃の「標的」となる国外の人物をリストアップするようNSAに要請していたことも暴露した。
さらにガーディアンは、世界のコンピュータ監視システムをトラッキングする極秘ツールをNSAが保持していることも明かした。「無限の情報提供者」と名付けられたそのツールに関する文書には、3月だけで「世界中のコンピュータネットワークから97億件」という膨大な情報をNSAが収集した経緯が記されている。
危険を冒した内部告発の理由
一連のリークによって、スノーデンは20万ドルの年収も家族や恋人との平穏な生活も失うことになる。それでも告発したのは「アメリカ政府が秘密裏に構築した巨大な監視体制によって、世界中の人々のプライバシーとインターネット上の自由、基本的人権が破壊されていることに良心がとがめた」からだという。
先週末まで香港のホテルに身を隠していたスノーデンは、CIAに居場所を特定されたり、米政府の依頼を受けた香港マフィアに誘拐される事態を恐れ、既にチェックアウトした模様だ。その後の所在はわかっていない。身の危険を感じながらも名乗り出たのは、情報をリークした理由を世間の人々に説明する責任があると感じたから。「政府は許されるべきでない権限を行使している。それを誰も監視できていない」
© 2013, Slate