最新記事

スポーツ

マスターズを揺るがす「女人禁制」騒動

名門ゴルフクラブは創設以来80年間貫いてきたルールを曲げて、ついに女性会員を認めるか

2012年4月2日(月)16時28分
サマンサ・スタインバーン

男の世界 昨年のマスターズで初優勝し、前年の勝者フィル・ミケルソン(左)からグリーンジャケットを着せてもらうカール・シュワルツェル(11年4月) Brian Snyder-Reuters

 4月5日に男子ゴルフのマスターズ・トーナメントが華々しく開幕するのを前に、その主催者であり会場となる米ジョージア州の名門ゴルフクラブ「オーガスタ・ナショナル」に暗雲が立ち込めている。同クラブが創設以来守り抜いてきた、「会員は男性だけ」というルールの変更を迫られているのだ。

 オーガスタ・ナショナルはこれまで、マスターズのスポンサー各社のCEOたちを同クラブの「会員」としてトーナメントに招待してきた。CEOたちはマスターズの優勝者に贈られるあの「グリーンジャケット」を着て、会場を自由に歩いたり、プレーすることを許されている。

 米IBMも、長年マスターズのスポンサーを務めてきた企業の1つだ。しかし今年初め、IBM初の女性トップとして、バージニア・ロメッティがCEOに就任。それに伴ってオーガスタ・ナショナルは、オーロメッティを会員に迎えるべきかという難題に直面している。同クラブは1934年の創設以来、1度も女性会員を認めたことがない。

IBMにも批判の矛先が

 およそ300人にのぼる会員には、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツや著名投資家のウォーレン・バフェット、ルイス・ガースナー元IBM会長兼CEO、アメリカン・エキスプレスCEOのケネス・シェノルト、シティグループ元会長のサンフォード・ワイルなど、そうそうたる顔ぶれが名を連ねる。IBMの歴代CEOたちも、全員メンバーだと言われる。

「オーガスタは、あらゆる意味でジレンマに陥っている」と、エール大学法科大学院の上級研究員でジャーナリストのマルシア・チェンバースはブルームバーグに語った。「ある会社のCEOを会員にするという伝統があるのなら、それは新しいCEOにも適用されるべきだ。彼女(ロメッティ)にIBMの歴代CEOと違うところがあるとすれば、女性という点だけだ」

 IBMとマスターズの広報はこの件に関し、ブルームバーグの取材に応じなかった。

「女性禁制」というオーガスタの方針を以前から批判してきた人権活動家マーサ・バークは、ロメッティが会員として認められなければIBMはスポンサーを降りるべきだと主張している。

 オーガスタの伝統は「時代遅れで、IBMの価値観とは相入れない。IBMの取締役会はこのようなクラブとは距離を置く責任があったにもかかわらず、何もしてこなかった」と、バークはゴルフダイジェスト誌に語った。「もし取締役会が何の行動もとらないというのなら、それは新CEOに対する侮辱だ」。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

国連、雨季到来前に迅速な援助呼びかけ 死者3000

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米関税警戒で伸び悩みも

ビジネス

関税の影響を懸念、ハードデータなお堅調も=シカゴ連

ビジネス

マネタリーベース、3月は前年比3.1%減 7カ月連
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中