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「失言」89歳記者は偉大だったのか

2010年6月14日(月)18時01分
エレノア・クリフト(本誌コラムニスト)

 あるときトーマスは著書にサインを求めてきた人物との会話の中で、相手がジャーナリストだと気づかずに、ブッシュ前大統領を「史上最悪の大統領」と決めつけたこともあった。この発言が大問題に発展しなかったのは、当時多くの人が同じ考えだったからに過ぎない。

 トーマスの標的は共和党だけではない。民主党のバラク・オバマ大統領に対しても、アフガニスタン戦争をエスカレートさせたことを理由に怒りを爆発させている。歴代のホワイトハウス報道官は、トーマスを「扱いにくい相手」と見なしていた。

 そして今回、パレスチナ問題で口を滑らしたトーマスは、もはや退場するしかなかった。そろそろ潮時だった。

 トーマスは、高齢を理由に引退すべきだという指摘をことごとくはねつけてきた。偉大なチェリストのパブロ・カザルスに引退を勧告した人物はどこにもいないと、いつも言っていた。もっとも、カザルスは95歳の誕生日の直前まで完璧な演奏を続けていた。

 今回の一件で、トーマスは引退を拒めなくなった。しかし、90歳目前まで立派にジャーナリストの任務をまっとうしていたことは事実だ。この点は、おそらく誰にも真似できない偉大な業績と言っていい。

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