BP原油流出後の姑息な火消し戦略
イメージダウンや賠償責任を最小限に見せようとして墓穴を掘ってしまった石油メジャー
2次災害 商売柄、災害対応や世論対策は得意のはずのBPなのに Dylan Martinez-Reuters
メキシコ湾で大規模な原油流出事故を起こした国際石油資本の英BPは、危機に瀕した企業イメージと社運を救うためにきわどい対応を迫られている。
事故に対する世論の怒りを鎮めるための対策を採らなければ、企業イメージはあっという間にズタズタになってしまう。かといって事故の影響をことさら小さく見せかけようと攻撃的かつあからさまなPR活動をすれば「環境への影響よりも利益を優先する企業」というレッテルが貼られてしまうに違いない。
そこでBPの経営陣は通常とは異なる危機対応に打って出た。事故が世界的に大きな話題になるのを避けるため、ローカルな規模で対処しようとしているのだ。
リークされた内部文書によると同社は、ガソリンスタンドなど実際に消費者と接触している現場に向けて、謙虚で面倒見のいい企業というイメージ作りに向けた本社の努力に水を差すような広告を勝手に出してはならないと指示を出したという。
幹部から系列スタンドなどの関係者に向けたメッセージはこうだ。「この微妙な時期、現状に鑑みてマーケティングのプランについてみんなも一緒に見直してみてもらいたい。また、消費者との接触は主にBPの営業所や地元コミュニティで行い、BPのブランドを支えるためにさらなる努力をしてもらいたい」
具体的には「否定的な発言を拡散またはそらし、BPブランドを支える効果の期待できるクチコミの輪」を作ることを勧めている。
ロンドンに本社を置くBPは通常、ローカルな広告費のうち5割を負担している。だが本社の用意した広告をそのまま系列スタンドが使う場合、費用は100%本社持ちだ。
株価を見れば嘘もつきたくなる?
事故発生以来、BPは世論が問題(そして同社の責任)を大きく捉えすぎないようにと対策を練ってきたがほとんどが裏目に出た。
例えばBPが当初見積もった流出量は、同社と関係のない専門家の分析によれば少なすぎだったらしい。またBPがメキシコ湾岸の住民に対し、損害賠償額に上限を設けるとする内容の和解文書への署名を迫っていたことも発覚した(連邦裁判所は同社に、この文書の撤回を命じた)。
BPはメキシコ湾岸の観光促進CM(ビーチは汚染されておらず、夏休みの予約をキャンセルするには及ばない、という内容)のスポンサーにもなった。だがこのCMを見た周辺住民は「被害は伝えられていたほど大きくない」と伝えるために自分たちの姿が利用されたような印象を抱いた。
BPが原油の流出規模を小さく言おうとするのも無理はない。事故以来、BPの株価は19%も下落。アメリカの水質浄化法によれば、BPは現在伝えられているよりもはるかに多い賠償金を支払わされる可能性がある。
この法律では「石油や有害物質を出す沖合の施設」を稼働させている企業は、流出した石油1バレルあたり1000ドル(今回のケースでは1日あたりの合計7000万ドル)を上限に賠償責任を負うと定められている。