ジャズ新世代の歌姫たち
最新アルバム『ブリューイン・ザ・ブルース』でコントマノウは、ビリー・ホリデイら有名歌手の曲のなかでもマイナーなものを選び、自分なりの解釈で歌っている。
彼女たちは言語の壁も飛び越え、基本的に誰もが英語で歌っている。ビルジニー・テシュネは南フランス出身だが、アメリカの海兵隊員と交流があった父親から英語を学んだ。「フランス語はジャズには向かない」と彼女は言う。「リズムに乗せて歌うのが難しいから」。そんなテシュネはピュアな低い声で「A列車で行こう」などの曲をカバーしている。
イタリアのトリノに生まれ育ったロバータ・ガンバリーニは、デビューしてしばらくはスウェーデン民謡をレコーディングしたりしていたが、最近になってジャズのスタンダードに転向した。
新作『ソー・イン・ラブ』は、サラ・ボーンが40年代に有名にした「ザット・オールド・ブラック・マジック」などを自分流に甘く歌ったものが中心だ。「即興でアレンジ可能な素晴らしい曲の大半が、たまたまスタンダード・ジャズだっただけ」と、彼女は言う。
定番を生まれ変わらせる
だからといって、彼女たちが新しい挑戦を避けているわけではない。エスペランサ・スポルディングは、ウェールズとヒスパニックとアメリカ先住民の血を引く母とアフリカ系アメリカ人の父の間に生まれ、アメリカで育ったが、英語だけでなくスペイン語やポルトガル語で歌っている。
「クエルポ・イ・アルマ」は30年代のスタンダード「ボディ・アンド・ソウル」をスペイン語で情熱的に歌い上げたもの。「過去の曲を使ったって、何か新しいものが生み出せる」と彼女は言う。
それでもスター歌手への道はどこから始まるのかと問えば、昔ながらの答えが返ってくる。「中国の奥地に住んでいて、ジャズミュージシャンになりたいと思ったら、まずはニューヨークかニューオーリンズに行ってジャズをやらなくては」とコントマノウ。それからさまざまな国へ移り、ジャズを世界と分かち合うのだ。
[2009年10月14日号掲載]