オバマ就任50日にみるF・ルーズベルトの壁
著名な投資家ウォーレン・バフェットは、こうした証券化資産はいま銀行にとって最も売りやすい資産だと語っている。この発言は、バフェットが他に先駆けて再び市場で大きな勝負に出ようと考えている証しかもしれない。そうであれば、ガイトナーにとっては名誉挽回の好材料になるだろう。
証券化資産の「有毒性」が軽減されれば、民間の投資ファンドの買値と政府が望む売値のギャップが縮まるかもしれない。
もっとも、現代の金融がかかえている問題はどれも、さまざまな因果関係が複雑に絡み合って生じるものだ。オバマ政権のある高官はこう語る。「かつては銀行の資産といえば預金だったが、今では銀行も数えきれないほど多様な業務を行っている。だから、大きな問題が五つも六つも同時に起きてしまう」
今では金融の世界がグローバルに広がっているのも、ルーズベルトの時代とは異なる点だ。オバマ政権も米議会も、独断で新たな規制を作るわけにはいかない。だからこそ、ガイトナーは3月13日に開幕した20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議で、各国に向けて発言する機会を待つ必要があった。
就任前の2カ月半を浪費
こうした取り巻く環境の違いは別にしても、これまでの50日間をみるかぎり、オバマは現代のルーズベルトとは言えない。オバマが打ち出した政策や、その進め方をめぐってはもっともな批判の声もある。
「(大統領選で勝利してから就任まで)2カ月半もあったのだから、就任式の2時間後には10項目にまとめたような経済再生プランを発表すべきだった」と、ジョンソンは言う。「(発表の場では)ガイトナーとサマーズを脇に従えて、10項目の指針を読み上げる。詳細は後でいい。それから大手銀行を何行か休業させたとしても、(この50日間で)秩序を乱すことなく再編を行う時間は十分あった」
一方でジョンソンは、景気刺激策の主導権を議会に与えてはいけないとも警告する。「現状では資金が市場に流入するペースが遅すぎる。まるで2010年の中間選挙をにらんで小出しにしているみたいだ」
もっとも、銀行を取り巻く状況が改善しはじめたら、オバマ批判の多くは的外れな指摘として忘れられるだろう。就任から100日目まで、残りおよそ50日。オバマがルーズベルトに生まれ変わる時間は、まだ十分ある。
[2009年3月25日号掲載]