最新記事

米大統領

オバマ就任50日にみるF・ルーズベルトの壁

2009年4月24日(金)01時45分
マイケル・ハーシュ(ワシントン支局)

 著名な投資家ウォーレン・バフェットは、こうした証券化資産はいま銀行にとって最も売りやすい資産だと語っている。この発言は、バフェットが他に先駆けて再び市場で大きな勝負に出ようと考えている証しかもしれない。そうであれば、ガイトナーにとっては名誉挽回の好材料になるだろう。

 証券化資産の「有毒性」が軽減されれば、民間の投資ファンドの買値と政府が望む売値のギャップが縮まるかもしれない。

 もっとも、現代の金融がかかえている問題はどれも、さまざまな因果関係が複雑に絡み合って生じるものだ。オバマ政権のある高官はこう語る。「かつては銀行の資産といえば預金だったが、今では銀行も数えきれないほど多様な業務を行っている。だから、大きな問題が五つも六つも同時に起きてしまう」

 今では金融の世界がグローバルに広がっているのも、ルーズベルトの時代とは異なる点だ。オバマ政権も米議会も、独断で新たな規制を作るわけにはいかない。だからこそ、ガイトナーは3月13日に開幕した20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議で、各国に向けて発言する機会を待つ必要があった。

就任前の2カ月半を浪費

 こうした取り巻く環境の違いは別にしても、これまでの50日間をみるかぎり、オバマは現代のルーズベルトとは言えない。オバマが打ち出した政策や、その進め方をめぐってはもっともな批判の声もある。

「(大統領選で勝利してから就任まで)2カ月半もあったのだから、就任式の2時間後には10項目にまとめたような経済再生プランを発表すべきだった」と、ジョンソンは言う。「(発表の場では)ガイトナーとサマーズを脇に従えて、10項目の指針を読み上げる。詳細は後でいい。それから大手銀行を何行か休業させたとしても、(この50日間で)秩序を乱すことなく再編を行う時間は十分あった」

 一方でジョンソンは、景気刺激策の主導権を議会に与えてはいけないとも警告する。「現状では資金が市場に流入するペースが遅すぎる。まるで2010年の中間選挙をにらんで小出しにしているみたいだ」

 もっとも、銀行を取り巻く状況が改善しはじめたら、オバマ批判の多くは的外れな指摘として忘れられるだろう。就任から100日目まで、残りおよそ50日。オバマがルーズベルトに生まれ変わる時間は、まだ十分ある。

[2009年3月25日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

関税でインフレ長期化の恐れ、輸入品以外も=クーグラ

ワールド

イラン核開発巡る新たな合意不成立なら軍事衝突「ほぼ

ビジネス

米自動車関税、年6000億ドル相当対象 全てのコン

ビジネス

米、石油・ガス輸入は新たな関税から除外=ホワイトハ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 10
    トランプ政権でついに「内ゲバ」が始まる...シグナル…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中