同性婚禁止と戦う米記者の告白
私たちはハーベイ・ミルクの生涯からどういう教訓を学ぶべきなのか。映画『ミルク』の脚本家で同性愛者のダスティン・ランス・ブラックはこう述べている。この映画を作ったのは「私たちがまた同じ過ちを犯そうとしているように感じた」からだ、と。
ミルクが登場する以前、同性愛者のリーダーの大半は、理解ある非同性愛者に活動を任せていた。同性愛者が「出しゃばり」すぎて反感を買うことを恐れたのだ。
ミルクの考えは違った。権利は要求して勝ち取らなければならないと、ミルクは仲間たちに呼びかけた。アメリカ建国の父トマス・ジェファソン、黒人の権利のために戦ったキング牧師、女性の権利を要求したフェミニスト活動家グロリア・スタイネムも、みんな戦って権利を勝ち取ったのだと。
では、同性婚をめぐる今年の戦いで同性愛者はどう行動したか。提案8号推進派はアフリカ系アメリカ人の有権者に向けた広告で、同性婚に反対だというオバマの発言を引用した。これに同性愛者のリーダーたちは非難の声を上げた。オバマは提案8号への反対を表明していたからだ。
しかし同性愛者のリーダーたちは、オバマに真意を問いただすことをしなかった。民主党の大統領を誕生させることを優先し、オバマに厳しい質問を浴びせることを避けたのだ。
提案8号反対キャンペーンの戦略についても、中間層の抵抗感を強めないために「同性愛者色」を薄めようと、リーダーたちは考えた。同性婚の権利擁護を訴えるCMに同性愛者は登場せず、善意の非同性愛者たちが人権を奪うことの危険性について語った。
若い世代が立ち上がった
こういう態度をミルクが目のあたりにしたら、どう思うだろう。ただ、いま生まれつつある状況にはミルクも満足するはずだ。
77年の苦い敗北が同性愛者を本格的に立ち上がらせたのと同じように、08年11月4日の提案8号可決は、新しい世代の活動家が動きだすきっかけになった。「同性愛者の権利を当然のものと思っていた若い世代がいっせいに積極的に活動しはじめた」と、ロサンゼルスの活動家ジム・キーは言う。
ジェフと私は結婚することにより、いくつかのことを誓ったことになる。相手を愛し続けること。私たちも普通の人間なのだと、すべての人に示すこと。そして、私たちの権利を奪い取ろうとする人間がいるときに、黙って見ていないで戦うこと。
ジェフと私は、結婚指輪にある言葉を刻むことにした。「歴史をつくった日----2008年10月25日」。きっとトマス・ジェファソンとハーベイ・ミルクもうなずいてくれるだろう。
[2008年12月24日号掲載]