超党派を拒む「抵抗勢力」ナンシー・ペロシ
オバマ側にペロシが激怒
ペロシ周辺は否定しているが、ある政権筋によると、ペロシはホワイトハウスが民主党下院議員に接触する際は必ず自分に知らせるよう求めたという。彼女は会話の内容まで知りたがり、ホワイトハウスもこれに応じたらしい。
ペロシが仕切る下院とホワイトハウスを調整する役目を担うのは、かつてペロシの下で民主党下院議員団長を務めたラーム・エマニュエルだ。オバマがエマニュエルを首席補佐官に起用したのも、下院時代の彼がペロシに立ち向かえる数少ない議員の一人だったからだ、という説もある。
だがある民主党スタッフによると、エマニュエルはさっそくペロシの怒りを買った。エマニュエルは景気対策法案への共和党の支持を得るため、教育関係の支出を一部削ることで総額を圧縮してはどうかと、民主党上院院内総務のハリー・リードと内々に相談していた。これをかぎつけたときのペロシの怒りは相当なもので、オバマ自身が彼女に電話し、議長(と下院)を無視するつもりはないと釈明したほどだ。
今のところ、オバマがペロシを必要とする以上に、ペロシはオバマを必要としている。だがオバマ人気が長続きしないことは、本人が最もよく承知している。今後の予算編成や医療制度改革の闘いでは、ペロシの協力が不可欠だ。
2月23日にホワイトハウスで開かれた超党派議員らによる「財政責任サミット」では、テキサス州選出の共和党下院議員ジョー・バートンが立ち上がって、オバマに注文をつけた。本当に超党派の支持を得たいのなら、議会をもっと「開かれた」場にするよう、ペロシに指示するべきだ、と。
心の底では同感だと思っただろうが、オバマはあえてぺロシを擁護した。「多数派は野党に寛大でなければならないが」と彼は言った。「野党も建設的である必要がある」
後にこのオバマ発言を聞いたペロシは大喜びしたという。民主党幹部の側近によれば、最近のペロシは景気対策法案の扱いで自分がさらし者になっていると感じはじめていた。そこへ、思いがけない大統領からの援護射撃。
ワシントンで「友達の輪」を広げるすべを、早くもオバマは身につけたようだ。
[2009年3月11日号掲載]