ネアンデルタール人「絶滅」の理由「2集団が互いに無視していた」...ゲノム解析から驚きの新説
The Last Neanderthal
ネアンデルタール人(ホモ・ネアンデルターレンシス)は私たちホモ・サピエンスに最も近い種だ。かつてユーラシア大陸で暮らしていたが、約4万年前に絶滅した。地域や時期によっては現生人類と共存し、交配までした。
5万年に及んだ孤立状態
「これまで、絶滅時には遺伝的に均質な集団が1つしかなかったと考えられてきた。だが今回、絶滅当時2つ以上の系統が存在していたことが分かった」と、論文の筆頭執筆者の1人であるデンマークのコペンハーゲン大学の集団遺伝学者ターシカ・ビマラは報道発表で述べている。
トーリンが属していた集団は約5万年にわたってネアンデルタール人の他の集団と交流がなかったようだ。
「つまり5万年間、徒歩で10日ほどの距離で暮らしていたネアンデルタール人の2集団が互いを完全に無視して共存していたわけだ。これはホモ・サピエンスすなわち現生人類には考えられないことで、ネアンデルタール人の生物学的世界観は私たちホモ・サピエンスとは懸け離れていたに違いない」と、スリマックは述べている。
トーリンの発掘場所の堆積物を調べた結果、研究チームは当初、彼が4万~4万5000年前に生きていたと推測。「最後の」ネアンデルタール人──絶滅までの1000年間に存在した最後の1人ではないかと考えた。