最新記事
AI

「テック企業経営者としては異例」...チャットGPTのCEOが世界中の指導者に「挨拶回り」に行く理由とは?

A Charm Offensive

2023年6月29日(木)18時00分
リシ・アイエンガー

5月に米上院司法委員会の公聴会に出席した際は、「重要なレベル以上」のAIモデルについては政府に登録を義務付けるとともに、取り扱いをライセンス制にすることを呼びかけた。また、AIのグローバルな展開を踏まえて規制面での国際協力も求めた。

テック大手に有利な環境

だが、「重要なレベル」とは、どんなレベルなのか。アルトマンはその線引きに影響を与えようとしていると、批判派は指摘する。

また、このような規制は、オープンAIのように資金力がある大手を優遇するだけだと、ジョージ・ワシントン大学のスーザン・アリエル・アーロンソン教授は語る(オープンAIはマイクロソフトから巨額の投資を得ている)。

AIモデルの構築には、膨大なデータ処理能力を持つ高性能コンピューターが必要であり、既にこの業界は大手に有利な状況が出来上がっている。

規制によって、中小企業がクリアしなければいけない課題が増えれば、ますます競争の土俵は傾くとアーロンソンは言う。

ただ、規制が遅れていることは問題だ。AIが将来どんなことをしでかすかに注目が集まっていて、虚偽情報の拡散など「今、私たちの目の前で現実的な弊害」が起きていることが見落とされていると、セーラ・ウエスト元米連邦取引委員会(FTC)AI担当上級顧問は警告する。

それでも、各国の政策当局者がAI規制に前向きな姿勢を見せているのは、ここ10年ほど、テクノロジーの急速な進歩に規制が追い付かず、個人情報の不正使用、虚偽情報や誹謗中傷の流布、大手による独占などの問題が拡大したことへの反省があるからだ。

だから各国政府は、アルトマンの警告に積極的に耳を傾けているのかもしれない。

「(オープンAIなど)テクノロジー企業が規制の内容に影響を与えようとするのは、これまでにもあったことだ」と、アーロンソンは言う。

アルトマンの世界行脚がこれまでのものと大きく違うのは、「政策当局の反応だ」と、彼女は指摘する。「過去の苦い経験のせいで、行きすぎなほど大歓迎している」

From Foreign Policy Magazine

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは149円後半に軟化、米関税待ちで様

ワールド

情報BOX:トランプ米大統領、3期目は可能か

ワールド

米、中国・香港高官に制裁 「国境越えた弾圧」に関与

ビジネス

アングル:大荒れだった1-3月の米国株、政策の不確
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中