「テック企業経営者としては異例」...チャットGPTのCEOが世界中の指導者に「挨拶回り」に行く理由とは?
A Charm Offensive
5月に米上院司法委員会の公聴会に出席した際は、「重要なレベル以上」のAIモデルについては政府に登録を義務付けるとともに、取り扱いをライセンス制にすることを呼びかけた。また、AIのグローバルな展開を踏まえて規制面での国際協力も求めた。
テック大手に有利な環境
だが、「重要なレベル」とは、どんなレベルなのか。アルトマンはその線引きに影響を与えようとしていると、批判派は指摘する。
また、このような規制は、オープンAIのように資金力がある大手を優遇するだけだと、ジョージ・ワシントン大学のスーザン・アリエル・アーロンソン教授は語る(オープンAIはマイクロソフトから巨額の投資を得ている)。
AIモデルの構築には、膨大なデータ処理能力を持つ高性能コンピューターが必要であり、既にこの業界は大手に有利な状況が出来上がっている。
規制によって、中小企業がクリアしなければいけない課題が増えれば、ますます競争の土俵は傾くとアーロンソンは言う。
ただ、規制が遅れていることは問題だ。AIが将来どんなことをしでかすかに注目が集まっていて、虚偽情報の拡散など「今、私たちの目の前で現実的な弊害」が起きていることが見落とされていると、セーラ・ウエスト元米連邦取引委員会(FTC)AI担当上級顧問は警告する。
それでも、各国の政策当局者がAI規制に前向きな姿勢を見せているのは、ここ10年ほど、テクノロジーの急速な進歩に規制が追い付かず、個人情報の不正使用、虚偽情報や誹謗中傷の流布、大手による独占などの問題が拡大したことへの反省があるからだ。
だから各国政府は、アルトマンの警告に積極的に耳を傾けているのかもしれない。
「(オープンAIなど)テクノロジー企業が規制の内容に影響を与えようとするのは、これまでにもあったことだ」と、アーロンソンは言う。
アルトマンの世界行脚がこれまでのものと大きく違うのは、「政策当局の反応だ」と、彼女は指摘する。「過去の苦い経験のせいで、行きすぎなほど大歓迎している」