最新記事

AI

画像生成AIの「人種的偏り」は誰のせい? 白人男性ばかりが目立つ理由

Does AI Dream of a White World?

2023年3月1日(水)16時30分
ヘザー・タル・マーフィー
AIが生成した画像

多くの場合、画像生成ツールは白人の画像を生成する。「貧乏」など特定の単語を入力すると、非白人の画像が出てくる DALL-E 2ーSLATE

<AIツールが提示する画像に白人が多い理由は、手や指をうまく描けない原因と同じかもしれない>

筆者は最近、人工知能(AI)がなぜ人間の手、特に指を描くのが苦手なのかを調べ始めた。AIがリアルな手をうまく生成できないことは長年の課題だ。ここから分かるのは、テクノロジーをさらに改善する必要があること、そして手や指がとてつもなく複雑なものだということだ。

AIツールのテクノロジーを比較するため、私は5つの画像生成ツールにこんなプロンプト(命令文)を入力した。「けんかの後で手をつなぐ50年間連れ添った夫婦」

使用したのは、話題のチャットボット(自動応答システム)「チャットGPT」を開発したオープンAIが提供する無料ツール「ダリ2」。オープンソースのAIで、無料の画像生成システム「ステーブル・ディフュージョン」を使う「イメージズAI」と「ナイトカフェ」。イメージ素材配信大手シャッターストックの画像生成ツール。そしてステーブル・ディフュージョンのウェブ版サービス「プレイグラウンド」だ。

結果は芳しいものではなかった。不格好な指以上に私の目を引いたのは、カップルが全員白人であること(AI画像①②)。どのツールを使っても、またツール内でどんなスタイルを選んでも、25組ほどのカップルは全て白人だった。

230307p56_AIA_02BSQ.jpg

AI画像① IMAGES.AIーSLATE

230307p56_AIA_04SQ.jpg

AI画像② DALL-E2ーSLATE

データの偏りが原因か

試しにプロンプトに「貧乏」という語を加えてみた。「けんかの後で手をつなぐ50年間連れ添った貧乏夫婦の肖像」

すると初めて非白人(褐色の肌)のカップルが登場した(AI画像③)。アメリカの人口の40%は非白人であり、世界には貧困層ではない褐色の肌の人々が大勢いる。それを考えると、奇妙な感じだ。

230307p56_AIA_01SQ.jpg

AI画像③ DALL-E 2ーSLATE

では、「けんかの後で手をつなぐ」を「ビーチでほほ笑む」や「レストランで食事する」に置き換えたらどうなるか。基本的には白人のカップルが増えるだけだ(AI画像④)。

230307p56_AIA_03SQ.jpg

AI画像④ STABLE DIFFUSIONーSLATE

さんざん実験を重ねた末に、ようやく人種の多様性を高めることに成功した。例えばカップルが連れ添った年数を短くしたり、記念日という単語を加えたりすると効果的だった。また、同じプロンプトで白人のカップルが20回以上出た後、黒人カップルの画像が現れることもあった。

しかし、アメリカ社会の実態に近い結果を出すのは予想以上に大変だった。また、アメリカでは新婚カップルの約20%は異人種のカップルだが、その画像を生成するのは5本の指がちゃんとある手の生成と同じくらい難しかった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

NATOプレゼンス強化へ、バルト海ケーブル損傷 エ

ビジネス

キャシー・ウッド氏、トランプ効果の広がり期待 減税

ビジネス

タイ、グローバル・ミニマム課税導入へ 来年1月1日

ワールド

中国、食料安全保障で農業への財政支援強化へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 2
    なぜ「大腸がん」が若年層で増加しているのか...「健康食品」もリスク要因に【研究者に聞く】
  • 3
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3個分の軍艦島での「荒くれた心身を癒す」スナックに遊郭も
  • 4
    わが子の亡骸を17日間離さなかったシャチに新しい赤…
  • 5
    地下鉄で火をつけられた女性を「誰も助けず携帯で撮…
  • 6
    ロシア軍の「重要」飛行場を夜間に襲撃...ウクライナ…
  • 7
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 8
    「不法移民の公開処刑」を動画で再現...波紋を呼ぶ過…
  • 9
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 3
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 4
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 5
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 6
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山…
  • 9
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 10
    なぜ「大腸がん」が若年層で増加しているのか...「健…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 9
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 10
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中