習近平が推し進める半導体の国産化、自給率を1桁から7割超へ
ACHIEVING INDEPENDENCE
中国政府はレガシー半導体で市場を圧倒しようとしている(江蘇省にあるメーカーのシリコンウエハー製造ライン) VCG/GETTY IMAGES
<アメリカの制裁で打撃を受けた中国メーカーが政府の強力な後押しを受けて巻き返しを図る>
中国の半導体受託生産大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)が、技術的に大きな躍進を遂げた。カナダの技術情報メディア「テックインサイツ」によると、SMICは回路線幅が7ナノ以下の半導体の製造工程を確立したらしい。しかもこの技術が使われた半導体製品は、1年ほど前から出荷されていたという。
これはアメリカの制裁が甘すぎかつ遅すぎ、そして時代遅れである証拠だと、一部メディアは断じている。
これまでSMICが実用化に成功していたのは14ナノチップで、10ナノ以下の製造工程の確立を目指していると考えられていた。ただSMICは2020年12月に、米政府が半導体関連の先端技術や装置の提供を禁じる企業のリストに加えられてしまった。このため、微細な回路パターンをシリコンウエハーに形成するのに必要な極端紫外線(EUV)露光装置を、オランダの半導体製造装置大手ASMLから入手できなくなった。
理論的には、EUVがなくても先端半導体は作れる。この分野の世界的リーダーである台湾積体電路製造(TSMC)は、7ナノチップを量産化した当初、EUVよりも波長が長い深紫外線(DUV)露光装置を使っていた。
ただ、DUVを使うためには、フォトマスク(露光装置にセットするガラス基盤)を増やす必要があり、露光の回数も増えて、工程がより複雑になる。そうなると不良率が高くなり、1チップ当たりの製造コストも高くなる。このため現在では、DUVを使うことはビジネス的に有効な選択肢ではなくなっている。
だが、中国にとって半導体産業は戦略的なものだ。少々高くついても、先端半導体の国産化を実現することのほうが、彼らにとってはずっと重要だ。実際、SMICはDUVを使った7ナノチップの量産化に突き進んでいるようだ。
TSMCの劉徳音(リウ・トーイン)会長は、7ナノは半導体製造における分水嶺だと語っている。14ナノチップとの最大の違いは、単位面積当たりのトランジスタ数が大幅に増える(つまり集積回路の集積密度が高くなる)一方で、消費電力は大幅に減ることだ。従って、7ナノチップは14ナノチップよりはるかにパワフルだが、より経済的だ。
国産率1桁から7割超へ?
例えば、GPU(画像処理半導体)大手の米NVIDIA(エヌビディア)は、20年5月に発表したデータセンター向けGPU「A100」の演算回路Tensorコアに、TSMCの7ナノチップを採用している。これにより、性能は従来商品より20倍もアップする一方で、データセンターのサーバーを積むラック(棚)は25だったものが1つで済むようになった。
つまり7ナノチップを使ったコンピューティング技術は、人工知能(AI)やクラウドコンピューティングや高速通信規格5Gなどの形で、軍事用にも民生用にも活用できる。