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コロナ特効薬を探せ

政府はなぜ遅い? コロナ対策には起業家的アプローチが必要だ

TIME FOR THE “ENTREPRENEUR-IN-CHIEF”

2020年5月21日(木)17時05分
ジェフ・ウェッブ(起業家、バーシティー・ブランズ創業者)

2つ目の疑問については、政府が危機の中で全権を握る存在になると、人々は本能的に自分で考える義務を放棄し、「専門家」に委ねてしまうからだろう。要するに、私たちはもっと自分の頭で考えるべきなのだ。

検査に関しては4月3日、米ヘルスケア企業のアボット研究所が開発した5分でウイルス判定ができる検査キットをFDAがようやく承認した。それまでは、CDC承認の検査と規定と手順を満たした上で、感染リスクが高い人にのみ許可されていた。この承認が遅かったせいで、「市場投入速度」が大幅に妨げられた。いまカリフォルニア州のある会社は、自宅で指に針を刺すだけで瞬時にウイルス判定できる検査キットのFDA承認を待っている(5月中旬時点で、いくつかの抗体検査キットが承認されている)。

この検査が実現すれば、人々は仕事に戻ることができる。さらには、血液に含まれる抗体で感染症に対抗することもできるかもしれない。

経営者としては、政府による現在の治療対策はもどかしい。今では誰もが、ヒドロキシクロロキンと抗生物質アジスロマイシンの組み合わせが新型コロナに有効かもしれないとの記事を書いたフランス人研究者を知っている。FDAがこれを承認したのは4月になってからだ(※編集部注:現在は推奨されていない)。この危機の中で、なぜそんなに時間がかかったのだろうか。

スコット・ゴットリーブ前FDA長官がウォール・ストリート・ジャーナル紙やソーシャルメディアで指摘したように、ほかにも生産してから治験できる治療法がいくつかあるようだ。治験してから生産する通常のプロセスに比べて数カ月は早くなる。これは、成功するのは1つしかないという可能性を知りながら、複数の投資を同時に行うベンチャーキャピタルの手法と同じだ。

私たちは今、政府の一部が引き起こした2つの政策の分断を経験している。つまり、ウイルスを封じ込めるために経済全体をシャットダウンすることと、以前と変わらない通常のアプローチを続けながら100%確実な解決策を見つけること。経営者なら、この2つが同時にできないことを知っている。

この病気に打ち勝つためには、起業家的なアプローチを取る必要がある。平常時なら取らないリスクを取り、先回りをしてウイルスと戦わなければならない。起業家として、私は時としてプロセスよりも結果が優先されることを知っている。

私たちの大統領も起業家としての経歴を持つ。その経験を今こそ生かしてほしい。いま求められているのは、司令官トランプではなく、起業家としてのトランプなのだから。

<2020年5月26日号「コロナ特効薬を探せ」特集より>

【参考記事】アビガンも期待薄? コロナに本当に効く薬はあるのか
【参考記事】自動車会社は人工呼吸器をどうやって量産しているのか

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2020年5月26日号(5月19日発売)は「コロナ特効薬を探せ」特集。世界で30万人の命を奪った新型コロナウイルス。この闘いを制する治療薬とワクチン開発の最前線をルポ。 PLUS レムデジビル、アビガン、カレトラ......コロナに効く既存薬は?

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