英語学習は不要になる? どんな能力が必要に? 機械翻訳の第一人者に聞いた
――今後は、例えばさまざまな分野の英単語を地道に覚える、などの作業はもういらなくなる?
今の自動翻訳システムなら専門用語もかなりカバーしているので、専門用語は機械に任せていいかもしれない。むしろ、解釈を間違っている可能性はあるので、人間は入力文を正しく理解してチェックできなければならない。そのためには、国語力や基本的な英語力が必要になる。
――人間には編集力が必要になるということ?
最終の生成物を作るのは人間で、チェックするというのは人間の高度な処理能力。翻訳をコンピューターにやらせて、それを参考にして、もっといい文章にする、チェックする、など高度なことを人間がやればいい。
――効果的に機械翻訳を活用する方法は。
自動翻訳の間違いに気付くために、日本語から外国語に訳したものをまた日本語に訳し直す、というやり方がある。この(逆翻訳の)プロセスを入れると、ミャンマー語など全く知らない言語でも使いこなすことができる。また、日本語を英語に機械翻訳するときには、不自然でもちゃんと主語を入れてから入力するなどの工夫が必要だ。
――自動翻訳が活用できるなら、今後はどんな学習が必要になるのか。
根本的に、英語の機械翻訳を利用したいのなら英語の文法をちゃんと勉強して、英語のことを分かっている状態で使わなければいけない。機械を使って作業を効率化しても、チェックしたり判断したりするのは自分でしなければ。
対面のコミュニケーションで、間違ったことを言ったら相手の表情で気付いてやり直しができるような状況ならまだいい。外部に向けて文書を発表するような、誤れば取り返しがつかないような状況では、ちゃんと利用者本人かプロの翻訳者が、機械翻訳の文章をチェックしなければならない。
機械翻訳を仕事で使いたい状況なら、自分の英語力はちゃんと鍛えておいたほうがいい。
また、語学の知識を持ち、自動翻訳を使って語学を克服しても、まだ必要なのは異文化理解力。失礼に当たらない話の進め方など、言葉の先には文化の問題がある。外国人と仕事をするならそこまで理解しておかなければならない。
――英語能力を今以上に上げる必要はあるか?
英語のレベルの上げ方も、「単語をたくさん覚える」「たくさん文を書ける」などいろいろあるだろうが、これまでとは違う能力のほうが重要になるかもしれない。面倒な作業は機械にやらせて、よりクリエイティブな部分を人間が担えばいい。
▼インタビュー前編:すでにTOEIC960点越え、日本の第一人者に「国産」機械翻訳について聞いた
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