インフルエンザの季節、粘膜免疫の働きを高める乳酸菌の役割とは?
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「乳酸菌R-1株を摂取すると、腸管粘膜にある粘膜免疫のリンパで認識され、細胞が全身を巡って、各粘膜組織に移動した後で増殖する。そこでIgA誘導の指令を出すため、全身の粘膜でIgAが増えて、体全体で守ることができます」と、木戸氏は説明する。また、培養した細胞にインフルエンザウイルスを感染させて、マウスから採ってきた血液や鼻汁を加えた実験では、タミフルによって獲得免疫が減った結果、ウイルスに感染する細胞の数が増えてしまうが、乳酸菌R-1株を食べさせたマウスからの血液や鼻汁を加えると、感染細胞が減少する明らかな感染防御効果が確認されている。
唾液には病原体が体内に侵入するのを防ぐ機能も
一方、神奈川歯科大学の副学長・大学院研究科長で環境病理学の教授を務める槻木恵一氏は、唾液に含まれるIgA研究の第一人者だ。唾液には消化を助ける、口の清潔を保つなどの役割と共に、IgAの働きによって病原体が体内に侵入するのを防ぐバリア機能もある。さらに、腸管免疫が活性化されると唾液中のIgAが増加するという相関も明らかになっており、唾液が感染症予防に果たす役割に注目が高まっている。
唾液に含まれるIgAを増やせば、より強力に感染症を予防できるのではないか。そう考えた槻木氏は、R-1乳酸菌で発酵したヨーグルトを使って臨床試験を行った。この株に着目したのは「自然免疫の一つであるNK細胞の活性を増加させ、上気道感染症への予防効果があると先行研究で明らかになっていたため」だと、槻木氏は言う。
研究チームは高齢者を2つのグループに分け、1つのグループには R-1乳酸菌で発酵したヨーグルトを、もう1つのグループには別のヨーグルトを1日1回、12週間摂取してもらった。すると、前者のグループでは特定のインフルエンザウイルスに対抗する力をもつIgAの濃度が有意に高くなることが確認できたという。つまり、このヨーグルトを継続的に食べることで、唾液中のIgAの分泌が促進され、インフルエンザウイルスの侵入を防げる可能性が高まるわけだ。
このほか、大豆や玉ねぎなどの抗酸化食品や、乳酸菌を含む食品(プロバイオティクス)、食物繊維(プレバイオティクス)を摂取することも、全身の粘膜免疫を活性化して、唾液中のIgAを増やすことにつながる。
さらに、唾液の「量」を増やすことも免疫力アップの重要なカギとなる。口腔内を洗い流す自浄作用が働くためにはある程度の唾液量が必要な上に、唾液量が減ると口の中が乾いてIgAが充分に働けなくなるからだ。寒くなると血管が縮小し、血液からつくられる唾液の量は少なくなりがち。そんなときは、耳の下にある耳下腺を4本の指でマッサージすると唾液の分泌が促されると槻木氏は指摘する。
乳酸菌の摂取に加えて、さまざまな対策を組み合わせることで免疫力を高められれば、今年の冬はインフルエンザを恐れることなく乗り切れそうだ。