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世界を変えるブロックチェーン起業損害は年5000億ドル ブロックチェーンとIoTでサプライチェーンを変えるインド企業
BLOCKCHAIN IMPACT AWARDS 2019
DENISHIPUNOV/ISTOCKPHOTO
<追跡して記録し、問題解決に役立てる――。「Newsweekブロックチェーン大賞2019」受賞スタトウィグ社>
※4月23日号(4月16日発売)は「世界を変えるブロックチェーン起業」特集。難民用デジタルID、分散型送電網、物流管理、医療情報シェア......「分散型台帳」というテクノロジーを使い、世界を救おうとする各国の社会起業家たち。本誌が世界の専門家と選んだ「ブロックチェーン大賞」(Blockchain Impact Awards 2019)受賞の新興企業7社も誌面で紹介する。
世界中で生産される食品の約3分の1は輸送中のトラブル(破損や腐敗など)で失われている。その損害額は、全世界で年間およそ5000億ドルと推定される。
いったいサプライチェーンのどこで、どのようなトラブルが起きているのか。それを追跡して記録すれば問題の解決に役立つのではないか。そう考えたシド・チャクラバーティーはシリコンバレーでのキャリアを捨ててインドに戻り、スタトウィグを起業した。ブロックチェーンとIoT(モノのインターネット)を組み合わせて輸送中の物資を正確に追跡する会社だ。
「商品は私たちの手元に届くまでに何千キロもの距離を移動し、大勢の人の手を経ている」と彼は言う。しかし「輸送データは業者ごとに管理されていて、情報を共有しにくい」。
同社は輸送中の物資をIoTで追跡し、そのデータをブロックチェーンに保存する。トラック運転手が冷蔵庫の温度設定を誤ったなどのミスをほぼリアルタイムで把握し、誰も改変できない形で記録している。
同社はワクチン搬送の効率改善にも協力している。製造されたワクチンの半数以上は、患者に届く前にダメになっている。輸送業者がきちんと温度管理を行っているケースは全体の3分の1にも満たないからだ。
しかしブロックチェーンで輸送プロセスを記録すれば「効率改善と問題への即時対応、データの改変防止」が可能になるとチャクラバーティーは言う。
信頼できる記録があれば、銀行や保険会社は速やかにリスクを分析できるし、必要に応じて小さな企業に資金を融通することもできるだろう。そうすれば、多少の損失はいとわない大企業よりも、良心的な小企業が優位に立てるはずだ。ちなみにユニセフ(国連児童基金)は昨年、こうした可能性とワクチン供給の効率改善の意義を認め、同社に資金を提供している。
スタトウィグはまた、インドにおける海産物輸送ルートの追跡にも取り組んでいる。気温の高いインドでは、輸送中の食品ロスは深刻な問題だ。
同社のプロジェクトの多くはまだ実験的な段階にあるが、国際社会からの注目度は高い。成功すれば、世界を変える力を秘めているからだ。
社名:スタトウィグ
分野:サプライチェーン・マネジメント
本社:インド
設立:2017年
<2019年4月23日号掲載>
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