最新記事
中米

海運の要・パナマ運河を気候変動が直撃、16億ドル巨大ダム計画が「危うい」深刻な事情

2024年12月8日(日)17時34分
パナマのリオ・インディオ川

パナマ西部、エル・ザイノ・イ・ラ・アレノザの緑豊かな渓谷では、数百世帯が農業や漁業、そして牛を飼育しつつ暮らしている。写真はパナマのカピラを流れるリオ・インディオ川。10月23日撮影(2024年 ロイター/Enea Lebrun)

パナマ西部、エル・ザイノ・イ・ラ・アレノザの緑豊かな渓谷では、数百世帯が農業や漁業、そして牛を飼育しつつ暮らしている。だがこの地はまもなく、気候変動の影響を受けるパナマ運河の運用を続けるために計画された巨大な人造湖の底に沈む予定だ。

その中のトレスエルマナスには農場が広がり、学校が2カ所、複数の教会、診療所が1カ所ある。パナマ運河庁による総工費16億ドルの大プロジェクトが実施された場合、今後6年以内に消滅する数十の街の1つだ。住民の意見は分かれる。街を離れたくないという者もいれば、離れざるをえないという前提で公平な補償を獲得することに集中する者もいる。最近の歴史を考えれば、補償額に満足できない場合には住民による反対運動が広がり、プロジェクト全体が危うくなる可能性がある。

このリオ・インディオ川ダム建設プロジェクトが最初に提案されたのは20年前。だが過去10年間で異常気象の頻度は増した。特にこの1年に発生した深刻な干ばつでパナマ運河の通航が制限されたことで、このプロジェクトの緊急性は高まった。

運河関連の収入はパナマの国内総生産(GDP)の3.1%に相当する。この水路は年間最大1万4000隻の船舶を通過させることができ、グローバルな海運貿易の2.5%を担っている。米国が自動車やアジアからのコンテナ船で運ばれる商業製品を輸入するためにも、また液化天然ガス(LNG)など米国からのコモディティー輸出にも同運河は不可欠だ。

試写会
『クィア/Queer』 ニューズウィーク日本版独占試写会 45名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平仲介撤退の可能性明言 進

ビジネス

トランプ氏が解任「検討中」とNEC委員長、強まるF

ワールド

イスラエル、ガザで40カ所空爆 少なくとも43人死

ワールド

ウクライナ、中国企業3社を制裁リストに追加 ミサイ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 5
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 6
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 7
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 8
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 9
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 10
    トランプに弱腰の民主党で、怒れる若手が仕掛ける現…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 6
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中