最新記事
SDGsパートナー

人にも、牛にも、環境にもやさしい酪農業へ カネカが取り組む「有機循環型酪農」とは

2024年10月29日(火)11時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー

newsweekjp20241025063807-cd32f01e4fc7fb7bd163b5b1d458365bc97b86eb.jpg

なぜ化学企業が酪農業に?

Foods & Agris SV 乳製品事業開発Strategic Unit販促企画チーム チームリーダーの天川隼人氏は、酪農事業に参入した当時のことを次のように振り返る。

「きっかけは『食の社会課題』のうち、とくに酪農の現状をカネカが立ち向かうべき課題として捉えたことです。当社は幅広い事業を実施していますが、実は創業当初からイースト菌などパンの原料の製造をはじめとする食品事業を展開してきました。乳製品事業には、そうした既存事業の成⾧も牽引するポテンシャルがあると考えました。社会問題の解決に貢献しながら事業も成長させることは、経営ビジョン『カネカは世界を健康にする』の考え方に則っています」

しかし、その挑戦は決して平坦な道ではなかったと天川氏は続ける。

「化学企業から酪農に参入することは苦難と課題の連続でした。まず酪農サイドでは、パートナーとして一緒に取り組んでくださる酪農家さん探しに苦労しました。化学肥料や農薬を一切使わない有機飼料栽培も失敗が多く、安定栽培のためにトライアンドエラーを重ねました。販売面でも、異業種からの参入で分からないことだらけのなか、営業担当者が販売網の開拓に努めてきました。今は、「オーガニック」且つ「A2ミルク」といった新しい価値を消費者の皆様に伝えていきたいと考えています」

A2ミルクとは、栄養豊富でお腹にやさしいことから注目されている次世代の牛乳だ。海外ではすでに大きなトレンドとなっている。同社の「ピュアナチュール™ オーガニックヨーグルト」に使われているのも、A2ミルクの有機生乳だ。

newsweekjp20241025064029-303533a21eca5275443297d756e1d613d7277263.jpg

別海ウェルネスファームの上空写真。隣接地に太陽光発電システムも

ICTによって働き方を刷新し、乳牛にストレスフリーな環境を与え、資源は循環させ、そして高付加価値なミルクを消費者に提供する──カネカの「有機循環型酪農」は、持続可能な酪農業のあり方を示す模範的な取り組みと言える。生産者の減少が続き、国内の生乳生産量の将来的な逼迫が懸念される今、同社の取り組みが風向きを変えるターニングポイントとなることに期待したい。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

訂正-米テキサス州のはしか感染20%増、さらに拡大

ワールド

米民主上院議員、トランプ氏に中国との通商関係など見

ワールド

対ウクライナ支援倍増へ、ロシア追加制裁も 欧州同盟

ワールド

ルペン氏に有罪判決、次期大統領選への出馬困難に 仏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中