新築だけでなく既存のビルもZEB化し「ネットゼロ」へ...パナソニックの低コスト省エネ&創電技術
改修により「ZEB Ready」となったパナソニック京都ビル
<建物単位での脱炭素の取り組みが広がりつつある。既存建築物のZEB化にはハードルがあったが、低コストで実現させる取り組みも始まっている>
世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや製品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えのもと、ニューズウィーク日本版はこの春、「SDGsアワード」を立ち上げました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
SDGsの目標7は「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」だ。世界各地で2050年までのネットゼロ、すなわち温室効果ガス排出量を実質ゼロにするための努力が続くなか、エネルギーを起源とするCO2の排出削減は喫緊の課題となっている。
その削減努力は国単位、自治体単位、あるいは個々の企業で行われたりしているが、なかには、オフィスビルやマンションなど建物を単位としたネットゼロの取り組みもある。
建物のエネルギー消費量を削減し、太陽光発電などの「創電」を組み合わせて、建物内で使うエネルギーを実質ゼロにする――このネットゼロ達成を目指す建物が、Net Zero Energy Building、通称「ZEB(ゼブ)」だ。住宅の場合はNet Zero Energy House(ZEH)と呼ばれる。
欧米ではZEBが普及しつつあり、日本でも近年、新築の建物をZEB化する事例は増えつつある。
だが、既存建築物のZEB化改修となると日本では先行事例があまりない。なぜなら、すでにそこで働く人や生活する人、利用する人がいるため長期の改修工事が困難であり、コスト面や既設の設備システムを大きく変えることに難色を示す不動産オーナーが少なくないからだ。
それでも、既存建築物のZEB化にはメリットもある。外皮性能の向上や高効率設備の導入などにより運用時のエネルギーコストを削減すれば、将来的なコスト低減が期待できる。
また、室内環境の改善により、従業員や利用者の健康・快適性(ウェルネス)を向上。さらに、世界的に脱炭素に向けた動きが加速する今、地球環境に配慮した建物は不動産価値の向上にもつながるだろう。
建築主や不動産オーナーに対し、ZEB化の業務支援(建築・設備の設計・施工・コンサル等)を行うZEBプランナーという資格がある。後発ながら、省エネ設備から太陽光発電、蓄電池までを手掛ける大手電機メーカーならではの強みを発揮しているZEBプランナーがパナソニックだ。
2023年11月には、パナソニック エレクトリックワークス社が京都市との公民連携を発表した。両者は互いのリソースを持ち寄り、既存建築物の外皮改修を行わずに低コストでZEB化改修を実現するモデル事例を生み出していく。