最新記事
ヘルス

休肝日は肝臓の健康には意味がない!? 専門医に学ぶ「リスクの高い酒」「アルコールを解毒するつまみ」

2023年8月14日(月)17時00分
浅部伸一(肝臓専門医) *PRESIDENT Onlineからの転載

果物が毒出しを促す

果物に含まれている「果糖」には、アルコールの分解を助ける働きがあります。また、果物の水分やカリウムは、アルコールの排出を促します。

特に「柿」にはタンニンの一種である渋み成分があり、アセトアルデヒドの作用を抑えることができます。果物の効果は、それだけではありません。肝臓がアルコールを分解するときには、タンパク質、ビタミン、ミネラルが消費されるので、ビタミンCが豊富な果物はビタミン補給になるのです。

また、果物には食物繊維もあります。さらに、果物であればゆるやかに血糖値が上がっていくので、お酒を飲む前後でも、飲みながらでも、食べることをおすすめします。アルコールそのものから糖はできません。糖質の少ないお酒だけを飲んで、何も食べずにいると、血糖値が上がらず空腹感をおぼえます。

その結果、飲んだあとにラーメンライスのようなものを食べてしまう人が出てくるわけですが、そのコースはいただけません。梅酒などの甘いお酒やビールのようにたくさんの糖質が含まれているお酒でなければ、血糖値をゆるやかに上げる果物をお酒のお供にするのは理にかなっています。

逆に、できれば避けてほしい酒席の食べ物も知っておきましょう。一言で表せば、避けてほしいのは「高糖質の食べ物」です。高糖質とは、たくさん砂糖が入っている食べ物だけではありません。穀類なども糖質です。

その観点から言えば、健康によさそうなイメージのある「春雨サラダ」や「お寿司」にも要注意です。春雨の成分は糖質がとても高いのです。お寿司もお米という糖質が主成分で、しかも酢飯には少なからぬ量の砂糖が入っています。

もちろん、少し食べる分には問題ありません。ただ、糖質の多い日本酒を飲みながら、お寿司をお腹いっぱい食べるようなことは、あまりおすすめしません。

体が悲鳴を上げるころにはもう手遅れ...

もしかすると、「実は脂肪肝なんです」という方が身近にいるかもしれません。脂肪肝とは「肝臓に脂肪がたまった状態」です。これもまた生活習慣病です。

浅部伸一『長生きしたけりゃ肝機能を高めなさい』(アスコム)詳しくは本書で解説しますが、実はすでに「脂肪肝の予備軍」になっている人はとても多いのです。脂肪肝は、お酒が原因のタイプを除けば、30歳ぐらいから増えてきます。

統計によると、現代の日本では、成人男性の3人に1人、女性の5人に1人が脂肪肝になっています。そして、脂肪肝の予備軍は2人に1人ともいわれています。もはや「国民病」と言ってもいいのが現状です。

怖がらせたくはないのですが、「自分は大丈夫」と思い込むのはとても危険です。なぜなら、肝臓は自覚症状が出ない「沈黙の臓器」だからです。「痛くもかゆくもない」ので安心している間に、体の中では着々と脂肪肝が......、という事態になっていないとは限りません。

そして、体が悲鳴を上げる頃には、肝臓はすでに末期的な状態に陥っているのです。

浅部伸一(あさべ・しんいち)

肝臓専門医、自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科元准教授
1990年、東京大学医学部卒業後、東京大学附属病院、虎の門病院消化器科等に勤務。国立がんセンター研究所で主に肝炎ウイルス研究に従事し、自治医科大学勤務を経て、アメリカ・サンディエゴのスクリプス研究所に肝炎免疫研究のため留学。帰国後、2010年より自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科に勤務。現在はアッヴィ合同会社所属。専門は肝臓病学、ウイルス学。好きな飲料はワイン、日本酒、ビール。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
presidentonline.jpg




あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザでの戦争犯罪

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、予

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッカーファンに...フセイン皇太子がインスタで披露
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 5
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 6
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中