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「アルツハイマーになりたくなければフロスせよ」 北欧の学者がそう説くワケは?

歯周病予防のデンタルフロスとアルツハイマー病の関係性

「寿命ハック」しかし、次の批判は、より妥当である。それは、アルツハイマー病の発症と関係のある病原体はヘルペスウイルスだけではない、というものだ。

2番目の容疑者になる細菌は通常、口中に棲んでいるポルフィロモナス・ジンジバリス(P・ジンジバリス)だ。P・ジンジバリスもアルツハイマー病で亡くなった患者の脳組織で見つかっている。この細菌は歯周炎と呼ばれる口の中の深刻な炎症を引き起こすことがある。そして歯周炎はアルツハイマー病(と心血管疾患)のリスクの高さと関連がある。

実際、60代の高齢者、8000人を対象として歯科検診を行った研究では、歯周病になっている人は20年後に認知症になるリスクが高いことがわかった。因果関係があるかどうかはともかく、デンタルフロスは有益だ。

容疑者リストのかなり下に、細菌のクラミジア・ニューモニエ(性感染症の病原菌クラミジア・トラコマティスと混同しないこと)や、カンジダ・アルビカンスのような真菌がいる。この二つも、アルツハイマー病で亡くなった患者の脳で見つかり、対照群の脳では見つかっていない。

現時点で最も有力な証拠はヘルペスウイルスを指しているが、微生物によるダブルパンチは珍しくない。犯人は単独の微生物かもしれないが、複数の微生物が絡んでいるのかもしれないし、微生物は無実だったという可能性もある。真相は不明だが、アルツハイマー病が今のところ治療できないことを考えると、微生物説を真に受けても損はないだろう。

ニクラス・ブレンボー(Nicklas Brendborg)

分子生物学者
1995年生まれ。コペンハーゲン大学の分子生物学博士課程に在籍し、若手研究者として活躍中。著書に『TOP STUDENT』、Lars Tvede氏との共著『SUPERTRENDS』がある。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
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