男女格差ランキング120位は本当? 「女性が差別される国」日本で男より女の幸福感が高い皮肉
はなから構成指標の妥当性などが議論されることはなく、もっぱら日本は女性差別のヒドイ国だと主張したい場合の絶好のデータという観点だけで世界経済フォーラムの「総合ランキング」が引用されているように感じられなくもない。
この手のランキングは、構成する複数の指標を加重平均して作成される総合指標によっており、指標の選択やウエートづけは作成者の考えによっているので、結果も恣意的になりがちである。
例えば、複数指標を総合化した世界各国や都道府県の幸福度ランキングが複数発表されているが、それがOECDの作成する権威あるランキングであっても、なるべく、無視するようにしている。幸福度を「そうであれば幸福であるに違いない」という観点から、所得、生活環境、医療介護、格差、自然などの状況の良好度を総合して順位づけしている場合がほとんどであり、「それで幸せを感じるのかは人それぞれ、国それぞれなのだから放っておいてくれ」と言いたくなる。
そして、幸福度を測るなら、幸福かどうかを聞いた意識調査によるのが一番だと思っている。
一貫して、女の幸福度が男を上回り続けている日本人
さて、本題に入るが、幸福かどうかを聞いた結果の幸福度を、他のさまざまな項目とともに、ほぼ5年おきに国際的に共通調査票で調べている「世界価値観調査」の最近回の結果が公表されたので(2021年1月)、このデータのジェンダーギャップについての国際比較を次に試みよう。
ジェンダーギャップ指数と幸福度の男女格差はどんな関係にあるかを知りたいと思う人は多かろう。
幸福度そのものの国際比較は、質問文の言語の差、あるいは幸福に対する文化的な考え方の差異が影響して解釈が難しい。例えば、所得水準に比例しているという結果はあるが、低所得の国でも幸福度の国別のばらつきは非常に大きいのである。
ただし、それぞれの国の幸福度の男女差については、回答者が同じ言語を使用し、同じ幸福感を持っている場合が多いはずであるので、むしろ、幸福度そのものより国際比較に適していると考えられる。
国際比較に入る前に、まず、日本人の回答結果について、時系列的に過去からの推移を振り返っておこう(図表2参照)。
幸福度(幸せと回答した者の比率)の推移は、男女計では、1981年、1990年には、77%程度だったが、2000年、2005年、2010年、2019年には、86~88%となっている。バブル期までより、その後の失われた10年、20年と呼ばれる時期のほうが、幸福度ではより高い水準となっており、意外な結果だともいえる。
ここで主題としている男女差だが、女性の幸福度から男性の幸福度を引いた数字で追ってみると、1981年から1990年に6.5%ポイントから8.1%ポイントへと開いた後、2005年にかけて2.3%ポイントまで狭まったが、2010年には8.1%ポイントと再度広がっている。2019年にもほぼ同レベルの7.2%ポイントの開きとなっている。
日本においては女性のほうが男性より幸福感を感じやすい状況が続いているといえよう。