アカデミー賞はスルーしたが、映画『チャレンジャーズ』の音楽は最高傑作...「もっと高く評価すべきだった」
Unforgivable Oscar Snub
ロスによると、この仕事を打診するグァダニーノからのメールには、こう書かれていたという──「めちゃくちゃセクシーな映画になるよ」。そしてレズナーとロスが作った音楽も、セクシーなものに仕上がっている。
テニスの試合と、10年以上に及ぶ3人の恋の三角関係を描いた場面は、テンポのいいテクノサウンドと共に。登場人物が転機を迎えるときは、物思いにふけるかのようにクラシック調に。グァダニーノの思惑どおり、観客は気が付くとテニスというスポーツと恋に落ちている。
アカデミーのメンバーは、映画音楽が独立した作品として多くの人に聴かれているかどうかに関心がないのかもしれないが、『チャレンジャーズ』の曲のいくつかは、音楽配信サービスのスポティファイで何百万回も再生されている。アカデミーは不人気な映画のほうが好きなのだろうか。
あるいは、このコンビに今さら賞を与える必要はないと考えたのだろうか。確かにレズナーとロスは、2011年に『ソーシャル・ネットワーク』で、21年に『ソウルフル・ワールド』でアカデミー作曲賞を受賞している。
しかし、映画の一部ではなく全体を通してエレクトロニック・ダンスミュージックを用いるのは、新しい果敢な挑戦だ。しかも、その取り組みは見事に実を結んでいる。
王者が驚嘆すべきプレーを見せているときは、ただのけぞって感嘆して見守るのが最も正しい場合もある。