最新記事
野球

大谷翔平をベーブ・ルースやテッド・ウィリアムズなどの過去の名選手たちと比べたら?

PUT THE BALL IN PLAY!

2024年10月2日(水)17時37分
グレン・カール(本誌コラムニスト、元CIA工作員)

これらの名選手と大谷を、5つの通算成績の指標から評価する。①打率、②出塁率、③1本塁打当たりの打数、④三振1個当たりの打数、⑤1盗塁当たりの試合数。もちろん、過去の名選手は大谷の3倍の約20年間、MLBで最高レベルのプレーを続けたことを忘れてはならない。


①打率

newsweekjp_20241002031332.png

大谷の打率は、MLBでのキャリアの大半を投手と野手の二刀流でプレーしてきたことが影響しているのかもしれない。打者に専念している今季の打率は、キャリア平均を2〜3分上回る。それでも他の偉大な選手たちの数字は、アベレージヒッターとしての大谷よりかなり上だ。

newsweekjp_20241002031245.jpg

テッド・ウィリアムズの生涯打率はレッドソックスの球団記録 BETTMANN/GETTY IMAGES

◇ ◇ ◇


②出塁率

newsweekjp_20241002031212.png

メイズ、ヤストレムスキー、大谷の3人の数字はかなり近い。偉大な選手たちだが、この指標でもっと偉大な選手たちとの間には開きがある。大谷の出塁率がいまひとつなのは、打者がフェンス越えを狙ってバットを振り回し、三振が容認される時代にプレーしているからではないか。

newsweekjp_20241002031133.jpg

ウィリー・メイズは走攻守そろった「コンプリート・プレーヤー」 GRANGER.COM/AFLO

◇ ◇ ◇


③1本塁打当たりの打数

newsweekjp_20241002031040.png

この指標で大谷を上回るのはルースだけだ。選手の偉大さを測る物差しは「第一線で活躍した期間の長さと通算成績」と言って差し支えないはずだが、対戦する投手にとってどれほど危険な打者であるかを正確に測るには、こちらの指標のほうが正確だろう。一発が怖い打者という意味で、大谷の右に出る選手はほとんどいない。

しかし長打が重視され、三振が許容される現代とは異なり、ルースが11.8打数に1本の本塁打を打っていた時代は、本塁打の数自体がはるかに少なかったことは覚えておいていいだろう。

newsweekjp_20241002031001.jpg

ベーブ・ルースの本塁打王12回はいまだに破られていない BETTMANN/GETTY IMAGES

◇ ◇ ◇


④三振1個当たりの打数

newsweekjp_20241002030938.png

「ホームラン狙いでバットを大振りすることがチームの勝率アップにつながる」という考えに同意できないのは、私も父と同じだ。

大振りした挙げ句に三振したら、得点につながらない。ベンチに戻るついでにヘルメットを地面に投げ付け、いら立ちをマッチョに表現したところで意味はない。こういうとき、父は「かっこつけてんじゃないぞ。ボールを前に転がせ!」と言っていた。

さて三振1個当たりの打数、つまり何打数に1回、三振を取られたかという指標で見ると、ウィリアムズの記録は「史上最も偉大な打者」の名にふさわしいものだ。彼は無駄振りをしない選手で、三振で打席を終わることはさらに少なかった。この点、ホームラン狙いの大振りが求められる現代に生きる大谷は分が悪いかもしれない。

でも私が思うに、昨年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)決勝で日本がアメリカに勝利したのは、スモールボールに秀でていたおかげではなかったか。

newsweekjp_20241002030842.jpg

豪快なスイングで知られたカール・ヤストレムスキー MARVIN E. NEWMANーSPORTS ILLUSTRATED/GETTY IMAGES

◇ ◇ ◇


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ADP民間雇用、9月14.3万人増 予想上回る

ワールド

イスラエル、国連事務総長を入国禁止に イラン攻撃巡

ビジネス

世界の資産価格、急落の恐れ 地政学リスク高まる=英

ワールド

日韓首脳が電話会談、緊密な意思疎通や対北朝鮮連携で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大谷の偉業
特集:大谷の偉業
2024年10月 8日号(10/ 1発売)

ドジャース地区優勝と初の「50-50」を達成した大谷翔平をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はどこに
  • 2
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する「ロボット犬」を戦場に投入...活動映像を公開
  • 3
    ジェットスキーのロシア兵を、FPVドローンが「排除」...背後から追跡、爆発するまでの緊迫映像をウクライナが公開
  • 4
    KATSEYEが韓国ハイブと米ゲフィンの手でデビュー、K…
  • 5
    欧州でも「世紀の豪雨」が町を破壊した...100年に1度…
  • 6
    8日間のはずが8カ月に...宇宙飛行士の「足止め騒動」…
  • 7
    【クイズ】「愛人」は中国語でどういう意味?
  • 8
    イランがイスラエルに報復できる手段は限られている…
  • 9
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
  • 10
    ワーテルローの戦い、発掘で見つかった大量の切断さ…
  • 1
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ日本の伝統文化? カギは大手メディアが仕掛ける「伝検」
  • 2
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はどこに
  • 3
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する「ロボット犬」を戦場に投入...活動映像を公開
  • 4
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
  • 5
    ワーテルローの戦い、発掘で見つかった大量の切断さ…
  • 6
    白米が玄米よりもヘルシーに
  • 7
    50年前にシングルマザーとなった女性は、いま荒川の…
  • 8
    中国で牛乳受難、国家推奨にもかかわらず消費者はそ…
  • 9
    【クイズ】「バッハ(Bach)」はドイツ語でどういう…
  • 10
    欧州でも「世紀の豪雨」が町を破壊した...100年に1度…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 3
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン」がロシア陣地を襲う衝撃シーン
  • 4
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 5
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンシ…
  • 6
    中国の製造業に「衰退の兆し」日本が辿った道との3つ…
  • 7
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 8
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組…
  • 9
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 10
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中